(続きの続き。) (の作業中)。
2019年9月16日 リステラス星圏史略 (創作)https://85358.diarynote.jp/201909152223494052/
の、続き。
◇
「…救けてくださって、ありがとうございました。」
慌てたエリーがソレル女史の細い体を惜しそうに離しながら、慌てて割って入った。
「わたくしはエリザヴェッタ・アリスと申しますわ。貴方のお名前をお伺いしてもよろしいですかしら?」
「おぉ、よくぞ尋ねて下さいました!」
とたんにソレル女史の銀の細い眉毛が、嫌そうに下がった。
この場にいるはずのない、皆がよく知る他のある人物に、言動と雰囲気が、そっくりだったので…
細身で短躯の見慣れない風体の男性は、大仰に、地球の旧時代の中世欧州の騎士のように、両腕を上げたり曲げたりしながらゆったりと頭を下げた。
「それがしはジョゼアール・エリア=エリ=アモンと申す者。どうぞジョゼとお呼びくださいますかな? お目にかかれて大変光栄に存じますぞ、ドンナ・レニエータ姫!」
「…エリーでけっこうですわ…」
「で? だから、アンタだれ? 何なんだよ?」
同僚の社交儀礼努力なぞは全部すっ飛ばして、レイがもう一度、要点だけを尋ねた。
「いまアンタこいつが無茶な空間跳躍して四散しかけたところを、宙の宙で受け止めて包囲して自分と一緒にまとめてここまで空間転移をしなおしたよな?
あんな離れ業、残念ながらこの《破壊成功者(シスターナ)》レイズ様でも無理だぜ?
そんな物凄い超絶能力者が実在するなんて、噂すら聞いたことがない。」
「これはしたり。」
ジョゼと呼んでくれと申告した男は、ふたたびおどけたように、左手を胸に当て、右腕を斜め後ろに泳がせる… ジースト人のレイは知らなかったが、エリ―の故郷である地球西洋の古典的な… お辞儀をしてから、しゃあしゃあと述べた。
「それがしは歴史遡行者。過去を改編する者。
はるか未来より来たりし時空間犯罪者…とでも申せば、通じますかな?
この時代の三次元世界の皆様がたにも…??」
「はぁ?」
レイを筆頭として、幾人かの者は、まったく判りませんねと、あからさまに顔をしかめた。
◇
「…では、航時能力者ではない、と?」
ささやかながら時間跳躍の能力を持つサキが、かろうじて話の接ぎ穂を見つけて突っ込んだ。
「いやはや、残念ながら。」
「そうですか。」
「それゆえ生憎、時間があまり赦されてはいないのですよ、違法航時機盗用犯罪者の身ともなれば」
「…はぁ、」
意味が不明だ。
「それゆえ、お伝えしたき事柄どもは、すべてこちらに納めてありますぞ!」
「なんでしょう?」
未来より来たとか自称する割には言葉遣いが大時代的なリスタルラーナ古謡語だったりするわりには、情報媒体だけはきちんと当代に合わせてくれている?
らしいところが、何だか更に怪しい。
「カエンジュの件でございますよ!」
「なんだって?」
「この時代の、こちらの世界では、《 苛怨樹(カエンジュ)》と呼ばれておりませなんだか?」
「? …ああ、オリセルラ・レイジアのことですね?」
意外なことに、ソレル女史が食いついた。
「しかり!… しかり!」
ジョゼアールは、もみ手をしながら嬉しそうにうんうんと頷いた。
「なんですの?」 エリーが首をかしげる。
「くだんのあれですかな? 例の、《目的物件》。」
心当たりがあったらしく、ダーナー艦長が問いかける。
「それです。」
ソレル女史が、先ほどまでの虚脱状態が嘘だったかのように、いつものしっかりとした鉄仮面のごとき無表情をとりもどして冷淡にうなずいた。
「我が艦の本来の探査目的である、超常能力者異常発生と消滅の歴史的周波数と同調して星間近傍を駆け抜ける、あの…」
「オリザドダレイド!」
レイがジースト語で該当する単語を叫んだ。
「それについての詳しい情報と、攻略方法についてでございます。」
うんうんとジョゼが相槌を打つ。
「なぜ、あなたが?」
「灰色姫と呼ばれたサワラソウェン様の苦悩を知る者だからでございますよ!」
は! と、ソレル女史のからだがかたまった。
「女史?」
「…なぜ… あなたがそれを…」
「縁者でございますので。」
またもやもったいつけて、時間遡行者は女性科学者に礼をした。
「もっとも、この場に居合わせた皆々様は、すべからく因果因縁の綾織りの結び目のかたがた。
…おっと!」
きょろり。と、大きな両眼を動かして、ジョゼは飛びあがった。
「時間がないッ!」
どこかの白兎のようなことを呟いて、瞬間、彼は空間跳躍して…
消えた。
◇
「ちょっと! 待ちなさいよ、この航時宙機ドロボウッ!」
どこかの空間から、そんな声が…
響いた。
の、続き。
◇
「…救けてくださって、ありがとうございました。」
慌てたエリーがソレル女史の細い体を惜しそうに離しながら、慌てて割って入った。
「わたくしはエリザヴェッタ・アリスと申しますわ。貴方のお名前をお伺いしてもよろしいですかしら?」
「おぉ、よくぞ尋ねて下さいました!」
とたんにソレル女史の銀の細い眉毛が、嫌そうに下がった。
この場にいるはずのない、皆がよく知る他のある人物に、言動と雰囲気が、そっくりだったので…
細身で短躯の見慣れない風体の男性は、大仰に、地球の旧時代の中世欧州の騎士のように、両腕を上げたり曲げたりしながらゆったりと頭を下げた。
「それがしはジョゼアール・エリア=エリ=アモンと申す者。どうぞジョゼとお呼びくださいますかな? お目にかかれて大変光栄に存じますぞ、ドンナ・レニエータ姫!」
「…エリーでけっこうですわ…」
「で? だから、アンタだれ? 何なんだよ?」
同僚の社交儀礼努力なぞは全部すっ飛ばして、レイがもう一度、要点だけを尋ねた。
「いまアンタこいつが無茶な空間跳躍して四散しかけたところを、宙の宙で受け止めて包囲して自分と一緒にまとめてここまで空間転移をしなおしたよな?
あんな離れ業、残念ながらこの《破壊成功者(シスターナ)》レイズ様でも無理だぜ?
そんな物凄い超絶能力者が実在するなんて、噂すら聞いたことがない。」
「これはしたり。」
ジョゼと呼んでくれと申告した男は、ふたたびおどけたように、左手を胸に当て、右腕を斜め後ろに泳がせる… ジースト人のレイは知らなかったが、エリ―の故郷である地球西洋の古典的な… お辞儀をしてから、しゃあしゃあと述べた。
「それがしは歴史遡行者。過去を改編する者。
はるか未来より来たりし時空間犯罪者…とでも申せば、通じますかな?
この時代の三次元世界の皆様がたにも…??」
「はぁ?」
レイを筆頭として、幾人かの者は、まったく判りませんねと、あからさまに顔をしかめた。
◇
「…では、航時能力者ではない、と?」
ささやかながら時間跳躍の能力を持つサキが、かろうじて話の接ぎ穂を見つけて突っ込んだ。
「いやはや、残念ながら。」
「そうですか。」
「それゆえ生憎、時間があまり赦されてはいないのですよ、違法航時機盗用犯罪者の身ともなれば」
「…はぁ、」
意味が不明だ。
「それゆえ、お伝えしたき事柄どもは、すべてこちらに納めてありますぞ!」
「なんでしょう?」
未来より来たとか自称する割には言葉遣いが大時代的なリスタルラーナ古謡語だったりするわりには、情報媒体だけはきちんと当代に合わせてくれている?
らしいところが、何だか更に怪しい。
「カエンジュの件でございますよ!」
「なんだって?」
「この時代の、こちらの世界では、《 苛怨樹(カエンジュ)》と呼ばれておりませなんだか?」
「? …ああ、オリセルラ・レイジアのことですね?」
意外なことに、ソレル女史が食いついた。
「しかり!… しかり!」
ジョゼアールは、もみ手をしながら嬉しそうにうんうんと頷いた。
「なんですの?」 エリーが首をかしげる。
「くだんのあれですかな? 例の、《目的物件》。」
心当たりがあったらしく、ダーナー艦長が問いかける。
「それです。」
ソレル女史が、先ほどまでの虚脱状態が嘘だったかのように、いつものしっかりとした鉄仮面のごとき無表情をとりもどして冷淡にうなずいた。
「我が艦の本来の探査目的である、超常能力者異常発生と消滅の歴史的周波数と同調して星間近傍を駆け抜ける、あの…」
「オリザドダレイド!」
レイがジースト語で該当する単語を叫んだ。
「それについての詳しい情報と、攻略方法についてでございます。」
うんうんとジョゼが相槌を打つ。
「なぜ、あなたが?」
「灰色姫と呼ばれたサワラソウェン様の苦悩を知る者だからでございますよ!」
は! と、ソレル女史のからだがかたまった。
「女史?」
「…なぜ… あなたがそれを…」
「縁者でございますので。」
またもやもったいつけて、時間遡行者は女性科学者に礼をした。
「もっとも、この場に居合わせた皆々様は、すべからく因果因縁の綾織りの結び目のかたがた。
…おっと!」
きょろり。と、大きな両眼を動かして、ジョゼは飛びあがった。
「時間がないッ!」
どこかの白兎のようなことを呟いて、瞬間、彼は空間跳躍して…
消えた。
◇
「ちょっと! 待ちなさいよ、この航時宙機ドロボウッ!」
どこかの空間から、そんな声が…
響いた。
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