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【AIR】 鳥の詩 【高音質】
https://www.youtube.com/watch?v=k4moOdG6Arc&list=RDYQFs6I8MVRM&index=22
Air-Farewell Song
【AIR】 鳥の詩 【高音質】
☆ ★
俺は負けない。隊長を守る。たとえ、どんなものからでも。
けれど…。
為すすべもなく走りさる後ろ姿を見送った。
ひび割れた声が、悲鳴のように幾度もいくたびもウェイファンを呼んでいる。
その叫びのぬしが自分自身であるという事すら、すでにリエンは意識していなかった。
ウェイファン自身が彼本人を殺したいと、それが絶対の望みだと。生きているのは…辛いと。
どうすれば。
いったい、俺は、どうすれば。
「~~~~っ!」
戦士の喉からもれた怒号はことばをなしてはいなかった。
何を憎み、何と戦い、誰を守ればいいと言うのか。
………誰を、誰から?
甘い言葉に酔いしれ、最愛の相手をお手軽に救ってあげられた気分になって。
……………なにひとつ。
自分が許せない。けれどもっと、こんな仕打ちのできる、恋しい相手が許せない。
「…なめんな…っ!」
彼は右手で銃を抜き、〈切断〉にセットするなり、ためらいもなく己の左腕に向けた。
スパリと、透過した光線が艇の内壁に突き当たって焦げた音をたてる。
ごとりと何かが床に落ちて響いたが、そんなものを顧みている暇は、彼にあるはずもなかった。
☆ ★
艇のドアを灼き切り蹴りやぶり。すでにかなりの高度となっているのを構いもせず跳び降りた。
着地し転がり受け身をとるが、衝撃を受けとめた肩の骨が外れたらしい。
どのみち左腕はすでに戦闘力を持たず、動くのに不都合はないさと気にもとめず走り始めた。
自爆装置の内壁が降りきってしまう前に、彼に追いつかなければならない。
何も出来ないのなら、彼を救えないのなら。
彼が、自分は勝手にやるからと宣言したあとなのだから。
俺も勝手に、やらせてもらおうじゃぁないか。
基地の通廊のあちこちに敵兵の死骸が転がっている。
では、まだ、彼は無事だ。
だてに俺が鍛えてあげたわけじゃない。
Aランクのくせに、頭脳労働タイプのくせに、一級の戦士とはりあう反射神経がある…。
先に駆け抜けた侵入者を追う、増援の一軍に追いついた。
彼の邪魔をしようという者になど情けをかける気は毛頭ない。
手榴弾を最大爆圧にセットする。自分にも被害が出ることが、何だと言うのだ?
とにかく…、
シャッターが降りてしまう前に。
共に。
…なにも出来ないのなら、せめて…
☆ ★
巨大な空間に据えられた虚仮威しのように複雑げな機械の前の、あきれるほど簡単な入力装置の前に、白煙に紛れるようにして青年は立っていた。
今の彼に出来る限りで気配を殺して部屋へ這い込んだリエンを、敵兵の残党だと思ったのか振り返ることもせず、パネルの上で忙しく指を走らせながら、
「もう遅いよ」
と、静かに言った。
「この惑星は自壊する。向こう百年、生物の棲めない星になる。…きみも可能性のあるうちに逃げたまえ。あと十秒で、そこのシャッターは完全に閉まるから」
そうか。では、あと少し。
よろよろと、やっとの思いで立ち上がり、
かすむ目でおぼろな目標をとらえて歩み寄ろうとする戦士を……
ふと、彼は振り向いた。
「~~~~ッ、リエンっ!」
悲鳴。立ちすくむ、黒髪。
してやったりと、すでに瀕死のていたらくの男は、精いっぱいの力でニヤリと、嘲ってみせた……つもりだった。
実際には傷だらけになった顔が、ただギクシャクと歪んだきりだったけれども。
「…なんで…逃げない…」
シャッターが降りきりロックがかかる、がしゃんと重たい機械の音がする。
焦げた死体と白煙と血の臭い。
散乱した肉片。
そんなものは気にならない。
これで最後まで、二人きりだから。
最期まで俺のものだから。
「………護衛なしで………」
「…一人で外出しちゃ…い…けません…と…、何度も…。
俺はっ、…言いました…よ、ね…?」
「…っの! 大ばかやろう……っ!」
「そりゃあ、あなたに比べれば、誰だって劣等遺伝子ですよ……」
リエンは笑った。笑ったままずるりと崩れ落ちた。
愛しい恋人の、さしのべられた腕の中に。
☆ ★
「…あなたの言った通りです…」
「喋るな。いま、止血する。」
「無駄ですよ? それより、こうやって抱いてて貰えませんか」
「うるさい。逆らうな。邪魔だから、しがみつくんじゃない!」
「だって気持ちがいい…」
うっとりと目をとじる。黒髪の告死天使が優しく誘っている。
「ああ、それで」と、寝言のようにリエンは呟いた。
「ランクづけ(遺伝子等級)の話。あれ、あなたの言った通りですよねぇ…。人間、事故だのテロだので、いつ死ぬか判らないんだし…。
平均寿命なんてものは、自殺したがるような人間を相手に気にしてたってしようがないですよね。ほんと。
だから、俺は…。
ねぇ、ウェイ。 …聞いてます?
最後ですから、どうしても、一言だけ、言わせてほしいんですけど…」
「聞いてないっ!」
叩きつけるように、ウェイファンは叫んだ。
おまけと言わんばかりに瀕死の重傷者の血まみれの横つらを、音たてて張りとばす。
「なんでこんな真似をしたんだっ!…手を離せってばっ!」
「…だって俺、ひとりで生きるのって、嫌でしたから。
あなたを一人で逝かせるのも。
それで…」
言いたいのに。言わなくちゃいけない言葉が、あるのに。
かすれていく意識のなかで腕の力が抜けた。
結局、先にここで死んでしまうとなると、誰がウェイファンの最期をみとるのだろう?
こんなに寂しがり屋の、臆病な甘ったれの、意地の悪い根性まがりの……
こんな、崩れていく惑星の、死体の転がる地下の密室なんかで、たった一人で死なせたりしたくない。
この人を、一人で泣かせたりしないで済むなら…。
神さま。
他にはなにも要りません。あと、もう、ほんのすこし。
この人の最期までを、見届けるだけの時間を。
…ひきかえになるのなら、たった一言を、伝えられなくても。
永遠に届かなくても、いいから。
自分のことは……… もう、いいから。
どくどくと、命が流れる。
床に川になるほど。
☆ ★
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Air-Farewell Song
コメント
cmk2wlさんがリツイート
cmk2wl @cmk2wl · 2月22日
もともと無理矢理連れ出された世界なんだ。
生きて悩みの他、何を得るところがあったか?
オマル・ハイヤーム
とりあえず漫画がたくさん読めてるし…
美味しいものたくさん食べてるし…
アルパカ狼さんを見つけたし…♪