逃げたラミルの気配を追いかけて、方向を探りつつ地道に公共機関を乗り継いで…

 あたりはいつの間にかうらさびた旧市街区である。

「やっぱりね。」

 サキが言う。

「…もうちょい左…かな」

 触手を伸ばしているレイが言う。

 こちらもテレポートして捕まえた方が話ははやいのだが、相手は子供だし、あまり驚かせたくない、と主張したのはサキの方である。

「 居た!」

 薄汚れたかんじの子供が一人、どうやらこれは偵察に出されていたらしく、さっと "跳んで" 逃げる。

「 おーお、A級の二人目がいたぜ。収穫!」

 長いコンパス(脚)で走ると、まだ斥候が報告しているひまに溜まり場のまんなかへと、飛びこんでしまった。

 いるわいるわ、いずれも家出してから相当たっているのだろうひどい服装の、ほとんど赤ン坊のままなのからラミルの年齢をかしらに、二十人ばかりの小さい子供達がうろうろあつまっている。

 すっかり野生化してしまった表情だ。

 これだけ "仲間" のいる本拠地でなら負ける心配は無いと踏んだのか、今度はラミルも避難命令を出すつもりはないらしかった。

「…この超近代的なリスタルラーナ・シティに浮浪児、ねェ。ま、いいけど…

 よくもまあ逃げ切れたもんだな」

 サキの科白に呼応して、ぷつぷつと泡のような感情がシールドの不完全なまわり中から湧きあがった。

(( 大人なんてだますの簡単だもん… 不器用でさ ))

(( どーせ探してないや。ボクのこと、気持ち悪いって…出てけって叩き出したんだから ))

(( 死んじゃったの…ごめんね。あたし、殺す気はなかったのよ… ごめんね。))

 と、こういった所だ。

「やれやれ」

 サキとしては苦々しく嗤うしか手はない。

 どれもお慣染みの… どのみち、理解のない時代に超能力者として生まれてしまった子供のたどるパターン(道筋)などに、そうそう種類があるわけもないのだし。

 かたわらの何か大きな空き箱をひき寄せて腰を据える。

「おい! 俺たちに何の用だよ!」

 ラミルがたまりかねて怒鳴る。

 再びレイに、今度は仲間ぐるみテレポートを封じられてしまったのに気づいて、イラついているのだ。頭にきたらしい。

「まあ聞いてよ。わたしらはあなた達の "仲間" だ。そしてね… あるプロジェクト(計画)を持ってる」

 今ごろエリー達が説明しているのはあくまでも建前。

 そして、…サキが話そうとしているのは、本音、なのだった。




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