https://www.youtube.com/watch?v=mXOyEBQsXJ4
Shanghai - 12 Girls Band





 子供達が狙うのは、食料品ばかりだ。

 ひとりが透視して指示を出し、ひとりが "引き寄せ" て手にした袋まで呼び込む。

 さらに他の何人かが交替で、何処かかなり遠くまでテレポートさせては、別の仲間に集めさせているらしい。

「…おーお。すっかりチーム・ワーク(集団行動)が板について…」

 さりげなくメインストリート商店街の人コミ波にまぎれて後を尾けながら、誉めていいのか判らない口調でサキがぼやいた。

「一ヶ月や二ヶ月のキャリアじゃないなあれは。」

「リスタルラーナ(理想郷)にも浮浪児がいるたあね」

 子供どころか大人の浮浪者や行き倒れのゴロゴロいる世界、ジースト(帝国)で育ったレイの感想は、また別だ。

(( 次、ティレイカ三パック。これで今日の "買い物" は最後よ ))

 透視を担当している女の子の精神浪が聴こえる。どうせ仲間にしかことば(心話)は通じないと思っているからなのか、遮蔽があまくて筒抜けの状態なのだ。

(( あ、おい。ここの店は先週も狙ったぜ。あんまりしょっ中じゃバレちまうよ、向うの通りのにしよう ))

 リーダーを務めるらしい、 "引き寄せ" 係の男の子が皆を細い路地へと導いた。

 表通りの華やかさとは裏腹な、殺風景な壁にはりついて店の内部の様子を探る。

(( オーケー。 ))

 三秒後には薄汚れた手提げ袋がポソッという音とともに軽くふくれている。

「 おーし引き上げようぜ、みんな待って…」

 ポン。

 肩に手を置いたのは、サキだった。

「いけないなあ、そんな真似をしちゃ」

「 ! な、なんだよっ!?」

 別にテレポートして現われたわけではないので子供達もまさか "仲間" だとは気づかない。

「なんのことだよっ?!」

「これ。」

 さっさとティレイカの箱を袋からさらいだす。

 それでもまだ男の子は平気な顔をとりつくろおうとした。

(( お、落ちつけよ。証拠がないもん。盗ったなんて誰にも言わせやしないぞ ))

「でも、事実、お金は払ってないだろ?」

 ついたまんまの店名入り万引き防止タグ。

「う… チキショウ!」

 走って逃げようにも路地の反対側は、いつの間にかレイに押さえられていた。

 子供達は袋のネズミだ。

(( ラミル! どうしよう? ))

((こいつら補導員かな))

((バッヂ持ってないよ))

((…心が読めない!))

(( どうしてバレたんだろう。どうして? ))

「落ち着けよ!」

 ラミル、と呼ばれた男の子が怒鳴った。

「みんな、今からオレの言うことを直ぐに聞けよ。………跳べ!!」

「 おっっ!! 」

 瞬間、出遅れたレイが止める暇もなく子供達の姿は次々と掻き消えた。

 ただし。

 一拍おいてサキとレイに精神波をぶつけてから逃げようとした、ラミル自身をのぞいてだ。

「うわ」

 咄嗟に攻撃をかわしながらサキが相手をホールドする。

「えっっ!? …跳べない!?

(( ラミル! どうしたの ))

(( いいから早く逃げろ。早く! ))

「はん。おまえアタマ(頭)としちゃなかなかデキるじゃないか」

 薄く笑ってレイが言う。もっとも全ては一瞬のうちのことで、超能力者同士ででもなければ何が起こったのかすら解りはしない。

「レイ。トレース(追跡)!」

 ラミルをかかえたまま、サキ。

「あいよ、」

 すぐに背を消す背の高い青い髪。

「え… あ? おまえら!? 」

「とにかく、これは、もとに返すよ。」

 しつこく手にしていたティレイカの箱がふっと、 "跳ば" される。

 ぎょっとして確かめてみるまでもない。

 ラミルはそれがもとの店のなかの寸分違わない場所に、何事もなかったかのように戻されたのを本能的に悟ったのだった。

「さてと、追うか」

 頭のなかでレイの現在座標を捕捉して。

 シュンッ。

 テレポート・アウト!

「わうっ …ぷっ」

「ばーか。タイミングが悪かったねえ」

 レイは平然としている。

 場所は、どこかの廃墟のなか。おそらく旧市街の一部を占領した溜まり場なのだろう。

 いるわいるわ、いずれも家出してから相当たっているらしい、ひどい服装の、ほとんど赤ン坊のままなのから、十歳前後のラミルくらいをかしらに、二十人ばかりの小さい子供達がうろうろ集まっている。

 すっかり野生化してしまった、たくましい顔つきだ。

  "買い出し" 係の年長の子供達が泡喰って逃げかえる、そのすぐ後に、追って現われたレイを "敵" と受け取って、

「やっつけろ!」

 そこの居合わせた全員がPKで石やらガラス壜やらを投げつける。

 運悪くその瞬間にでくわしてしまったサキが咄嗟にとけ切れずにコンクリ塊を砕いて、飛び散った砂埃にむせてしまった、という次第だ。

「 あ~~。人質とりやがった!」

「きったね~~!!」

「………へっ!?」

 驚いたのは、サキに連れて来られた "人質" の方だ。

「ラミル!早くこっちへ来いよ!」

「 あ、おう。」

「いけえ、第二波! 攻撃~~っ!!」

「わーっ。ちょっとタンマっっ!」

 サキが悲鳴をあげるヒマもあらばこそ。頭にきている子供達は遠慮えしゃくなくそこら中のものを投げつけて寄こす。

 慌ててシールドを張って防戦する。

「やれるもんならやってみな!」

「 レイ~~。おたくまた…」

 ゴタを起こすのは彼女の特技だ。『話し合いで解決』が一応サキの主義なのだが。

「はン、こーゆう連中には口で言っても無駄なのサ。」

(( こっちの力が上だと解りゃ、直ぐにあきらめて大人しくなる。 ))

 そう云いおいて、タン!と、一人すばやく反撃に移る。

「そっち五人まかせたぜ!」

「あのね~~。」

 あっという間に超能力大戦争、の世界である。

「子供相手にどうやって戦えって?!」

「要は黙らせりゃァいいんだ!」

 二対十五くらいの無茶苦茶な騒動だ。

 石は飛ぶわ、ガラス片は飛ぶわ、子供達の攻撃法が初歩的なPKだけだからいいようなものの、それでも戦意も場慣れもないサキには、かわし切るのも一苦労である。

 レイの方は、かなわないと見たか数人がかりで手足にしがみついて噛みついて、人間団子になっている。

「え~いこの!」

 つい面倒がって本気を出した。もともと相手がなんであろうと、 "手加減" なぞというのはレイの流儀には無い。

「危な……っっ」

 誰かが叫んだ。

 はね飛ばされた子にさらに突き飛ばされて、乱闘騒ぎには加わっていなかった小さな女の子が高い場所から落ちかかる。

 下には割れたガラス壜だ。

「どいてっ」

 サキが地を蹴って飛び出した。

 跳躍距離、五メートルはゆうにある。

 子供を抱きとめて、転げこんで、受け身の要領で体勢をたてなおす。

「…ふ、ふえぇっ」

 女の子がびっくりして安心して泣き出した。

「あ~御免。大丈夫? …と、あた★」

 よけた筈のガラス壜で二の腕がざっくり切れている。

 かなりな血。

「…サキ! こォの馬鹿が!」

  "ガキども" を放り出してレイがいきなりテレポートをかける。

「PKで捕まえりゃ十分まにあうだろーが! あんた一体、超能力者だってェ自覚が」

「…ありません。」

 きっぱり言い切っておいて、叩かれた。

「 て(痛)っ!! 」

 レイが手をかざすと血が停まり、傷口がすぅーっとふさがる。

「応急処置だぜ。後でちゃんとエリーに診てもらっといた方がいい」

「ん。サンクス」

「…チャーラっ。大丈夫っ?」

「……すご~い。治しちゃったあ…!」

 毒気を抜かれたてい(態)の子供達には、もう喧嘩を続けるつもりは無いようだった。







https://www.youtube.com/watch?v=mGfVbC34yPQ
The return of 12 Girls Band - TV perfomance - 2016 -
传承者之中国意象 23.10.2016 女子十二乐坊重出江湖

コメント

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2017年1月12日16:59


 …単純に表層的な言動パターンだけから推測すると、

「…やっぱりレイのほうが『ナカノヒト杉谷好一』じゃないの…?」

と訊いてみたところ、すかさず、

「あたしゃあんな腹黒な性悪じゃねェ!」

というツッコミが返ってきました…w(^^;)w

なるほど★

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