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Forever Young by JOAN BAEZ - by mathimata italikis glossas -






 グラスを磨く。

 ひとつひとつ、丹念に。

「…ティルニー」

 声をかけられて彼は驚いた。

「伯父さん」

 …店主である。

 早朝から深夜までやっているこの店には、手が二人分しかない。

 だから朝の準備と夕方の仕込みだけは一緒に済ませて、日中いっぱいはティルニーが、夜は店主が、それぞれ一人できりもりするのが習慣になっているのだが。

「もう、起きてきちゃったのかい…?」

 昼下がり、といった刻限である。丁度ひまになる時間だ。

「いや、そのー、なんだ。寝そこねてな。」

「そう」

 ティルニーは少しおどおどとして相手を眺めた。

 サキが、彼は二度と思い出さない、と言ったのはどうやら本当らしい。

 店主はこの間のことなど完全に忘れ去って、いつもと同じように気のいい親父ぶりを発揮している。

 ………でも。

 と、ティルニーは思ってしまうのだ。

 相手がたとえ覚えていなくとも、自分は忘れられない。

 あの、複雑な恐怖に満ちた、眼。

 自分は怪物なのだ、と、あの時ほど痛烈に感じさせられた瞬間はない。

  "伯父さん" はティルニーの存在を否定したのだ。…

 …そういう風に一旦こだわりはじめてしまうと、とてもいつものように素直に振る舞えるものではなかった。

 それに、ここに居る限りは、いつまた同じ失敗、同じ瞬間に、出喰わすことになるか…知れたものではないのだ。

(( わたしらはこういった仲間ばっかりで、ふね(星間船)で暮らしてててね。
  "エスパッション" て云うんだけど… ))

 想いは、また同じ科白の上に帰って行ってしまう。

 光明。

 異形の者同士て暮らしたら、少しはこの寂しさは埋ずめられるのだろうか。

「手伝うぞ」

 ティルニーの重苦しい沈黙に耐えかねたように、太った親父はグラスの列に腕を伸ばした。

「なに、一日や二日寝なかったところでこたえやせんて。わしはまだまだ若いんだぞ」

「 ……… 」

 無口な甥の胸のうちとは別に、彼は彼で妙に肩身の狭いような、困惑しきったような顔をしているのだった。

「その… なあ。ティルニーよ。あんまり気を落とすんじゃあないぞ。」

「 …え? 」

 ティルニーは不審気に、心持ち警戒して目線をあげた。

「今さっきまで隣のルノ爺と話しとったら、…その、レニが嫁に行っちまうそうだが…
 そりゃこの界隈にゃ珍しく、気立てのいい別嬪だったが、…その、」

「レニが結婚?! 本当かい。そりゃあ目出度いや」

「あの娘ばかりが女って訳でもなし……… へ?」

「相手は? やっぱりスラウかい。それとも」

「す、スラウだけどよ。…何だおまえ、知らなかったのか? ……じゃ、ここ2~3日、いやに落ち込んでるみたいだったのは、何なんだ。」

「え、おれ… 別に。」

「落ち込んでなかったなんぞ言うなよ。おまえは、どっから見ても、絶対に、確実に、どっぷり落ち込んどったぞ。」

「 …そう… かなあ… 」

 力一杯断言されて、ティルニーは困った顔をして、ようやく微かに笑った。

「ほれまたそう誤魔化すんだ」

 いい歳をした親爺が拗ねてブツブツと。

「大体おまえは暗いぞ。何も表に出そうとせん。人間ならたまに少しは泣いたり怒ったりしてみたらどうだってェんだ」

「………人間じゃなかったら?」

「 へっ? 」

「いやあの… おれって時々、海行ってクジラか何かになりたいなあ…って。」

 オキアミしか食べんから。

「こら、」

 珍しい甥っ子の "冗談" に店主は機嫌よく応じた。

「クジラダロートシャチにだろーと、なるのは勝手だが、おまえにはここ(店)を継いで貰わにゃならないんだぞ。海に行くのはやめとけ

 …それで思い出したが、おまえ結婚しろ。」

「えっ!…?!」

「おっ。紅くなったな」

 手を打って喜ぶ。

「二十八にもなって男がわびしくひとり身でいるもんじゃねえ。もっとも、おまえの童顔は、とても齢のとおりにゃ見えんがな。」









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【因果応報】店長「文句あるなら辞めろ!お前の代わりなんかいくらでも居る」とキレるとバイト全員が「辞めます」⇒1週間後ww【スカッとする話】
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え?某ローソンの例の店の話じゃないの…??www


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