（action.４－４）

　まず、窓が飛んだ。

　柱やカベが四散して、すべての細部が『ＡＫＩＲＡ』タッチでリアルに朝ぼらけの空に浮かんだかと思うと。

「…に、逃げろっ！」

　教授の悲鳴を待つまでもなく、

「退避！　退避－ッ！」

　ミドリ色の隊員たちはクモというよりカマキリの子を散らすイキオイで、福岡隊長の指示にしたがった。

　そして。

　建物が、倒れる。

　ＰＫ（サイコ）津波はあふれてご近所を襲い、洋館数軒、街路樹に、どこかの教会の塔がすっぱり吹っ飛んだ。

「　ひぇ～えっ★」

　例によって千香におんぶおばけするあたしだったりして、…あ、こいつ、ゲーテ座まで壊しやがった★

「…反撃！」

　すばやく散開した緑衣隊のハンドバズーカ。

「…た～まや～…♪ 」

　テスはちゃっかり高みの見物でケーキをひとり占めしている。

　…そう云えば、今年の花火大会は、見そこねてたっけ…

「テスぅ、ちょっとそっちに混ぜてっ ♪ 」

「だぁめっ。そこ力場が混乱してて介入できな～いっ ♪ 」

　えいこの。ケーキは６個もあるんじゃないかぁぁぁぁっ★

「千香っ！　テスも殺っちゃってっ」

「きゃぁあ★　いやぁんっ」

　事態はさらに混乱を、極めた。

「　撃て、撃て～っ!! 」

「…だいったいてめーは昔っから色ケが多すぎンだよっ」

「なによっ洗濯板ムネのガキッ」

「あんだと色魔のイロ毛虫ッ！

「ちょっとやだっ！　アップルパイはあたしのよぉぉぉぉッ!!」

　バズーカ。ＰＫ。対空砲。

　みつどもえの破壊音に多重放送の女のあらそいが加わって、はや懐かしのゴジラの世界。

　大八車の避難民なんか、磯子方面に向けて走りだしたりして…

「あの～映画のロケですか？」

「サインくださ～い」

「ＦＭ横浜ですがッ」

「患者はどこですかー？？」

　はては、

「…悔い改めよ。裁きの日は近い…」

「おん！まゆきらてぃそわかあああっ！」

「 "のげっぷ教" に入信しませんか～？？」

　戦域拡大。

　丘をくだった元町から中華街のあたり、ぱぱぱっと亀裂がはしってゆく。

　そして、

　気がついたら…あらら。

　千香もテスも、巨大化…！

　と、いうのかしらね。

　そもそもの故郷での原寸スケールに、からだが戻りつつある。

「うっ撃ちかたやめーッ！　空戦隊に連絡を取れ！」

「えーーーいＰＫじゃまだるっこしいわッ！」

「望むところよッ」

　…きゃあ。たんまたんまっ！

　あられもなくタイトスカートの裾を裂くテスに立ちむかう千香の肩のうえから、あたしは慌てて駆け降りた。