とりあえず、(5)。 (※あした⇒6を入れる~☆)
https://www.youtube.com/watch?v=FaMrlk2cr2c&list=RDJKBiO2MZSvg&index=27
Amazing Grace

https://www.youtube.com/watch?v=IITn9XHXT8k&list=RDJKBiO2MZSvg&index=27
[Tsuki no shizuku] Kunpu-Note (Koto and Shakuhachi /Traditional Japanese musical instrument )




 それからまた何日か、平穏な日が過ぎた。

 カムちゃんが、まいあさ俺を起こしにくる。

 過激に布団の上に飛び乗ったり、小さな指でそおっと頬をつっついて来たり、色々だ。

 学校や幼稚園はおろか近所に歳の近い遊び友達もなく、閉じこもりがちな街の住人達のなかで、今まで間近に他人と接するという機会がなかったらしい。

 どうやら俺は生きて喋る、とてつもなく面白いオモチャだと、解釈されてしまったようだった…。

 よじ登られるは、 "おんまさん" にされるわ…。

 午前2時間、午後2時間、篤さんが役所の在宅勤務でコンピューターに向かっている間なんか、完全に肉体労働だ。

 ふわふわした猫っ毛や、よく動く焦げ茶色の瞳を見ていると、どこかの誰かさんを思い出させられて、おはじきだの人形遊びだののお相手をはいはいと務めさせられるのも、けっこう楽しくないわけではなかった。


 ある日…

 食事の時間中、例によってキッチンの片すみで音質の悪い "行政放送" が鳴り、一週間分の食糧配給の連絡を流した。

 篤さんがカムちゃんを伴って受け取りに出かけてから小一時間。

 俺はもて余して何ということもなく "喫茶・植留花" の店の内部にいた。

 なにしろあの二人がいないと何もすることがない。

 古いビデオデスクは山ほど積み上げられていても、それをかけるだけの十分な電力供給がこの地底都市には無いのだ。

(………早く帰って来ないかな~~~…)

 その時、

 コン、コンコン、コン。

 特徴のあるノック音が "植留花" の裏扉から聞こえた。

「マスター、シナモンスティックを持って来た。依夢夫人はお元気か?」

「え?」

 心持ち押し殺したような声だ。

「ヨリム夫人はお元気か?」

「…あ、ちょ、…ちょっと待って下さい。今、開けます。」

 とにかくヨリム、というあの亡くなった女性の名前を云うからには、篤さんの知り合いに違いない。

 開店休業中、と本人が云ったにせよ喫茶店の主なら、マスター、というのは彼のことだろうし…

 慌てて鍵に手をかけた俺に。

「…何だって?! きみは誰だ!?」

 不信と疑惑と、かすかに驚き・焦りを含んだ声音が浴びせられた。

 ドアが開く。

 ぱっ、と、そこに居た男は一歩後ろに飛びすさり、罠にはまった事を悟った野生の獣のように、瞬間、身構えて四囲の様子を探った。

 …何事も起こる筈がない…

 と、…するり。

 隙間をくぐり抜けて後ろ手に戸口を閉ざすと、そいつはもう俺の体を壁に抑えつけて立っていた。

「…誰だ? 何をしている? ここは "紅茶の専門店" じゃないのか?」

「え、…し、知りません。俺はここの居候で…」

 うわー! うわー!

 …おなかのあたりに押し付けられてるコレって、もしかしてピストルだったりするんじゃないっ?…??

「イソウロウ?}

 …答えさせたいなら、首、緩めてくれぇ…!

「タツト。客人だよ。放してあげてくれ。」

 表口を開けてそのとき篤さんが云った。

「…………無事か、篤。花夢ちゃんも。」

 目に見えて腕の力が抜ける。

ここは紅茶の専門店だよ。コーヒーは出してない。

 …心配してくれてありがとう、と彼はつけ加え、それから咳き込んでいる俺に慌てて謝罪した。

 タツト…高原 尊(たかはら・たつと)、というらしい。なかなか精悍な、なりかけ二枚目中年だ。

「………異民族なんだな!」

 めちゃくちゃ、気に障ることに、篤さんが手短に "客" の素性の説明をし、お茶を入れるとかで店内の照明光量をあげるなり、そいつときたら思いっきりそう叫びやがった。

「初めて観たぞ! 実物はね。写真やヴィジホン越しの会談でならともかく。自称 "エリート階級" ばっかりが移住して出来たこの都市に、異民族が棲んでいられる筈がない。… "外" から来たと…? 信じるほかはないらしいな!」

 ………ああそうですか。成程ね…。

 約百年間、密室の状態であった割には、篤さんがあっさりと "外部からの混入" 説を受容してくれた理由がよっく判りましたよ…。

 ふん。ふん。

 …俺は国籍コンプレックスを刺激されると、無制限に落ち込むんだぞ…っ!!

 どーせね。

 俺の生まれ落ちた時代でさえ俺たち兄弟のような存在は、もう随分と少なくなっていた。

 親父の話では数十年前までは、もう少し、日本は他国人に対して寛容で、偏見や差別もさほど酷くはなく、むしろ白人種に対しての場合は一般に憧れを抱いてさえいたらしい。

 もの珍しがられ、或いは言語や習慣の障壁の故に疎んじられる事はあったとしても、意味もない積極的な悪意、というのは確かに減りつつあったのだ。

 むしろ "世界" という概念に向けて、感情が啓きつつあったと。

 親父は元フリーのカメラマンで、外国暮らしが長かった。 "白の一族" と呼ばれる生粋の砂漠の放浪民族の出で、フランスの教養と国籍を持つ母さん…褐色の肌と黄金の髪の…を、妻として帰邦した時、けれど日本という国は、何処かが変わってしまっていた。

 何故、どうして、変化したのかは、親父にも分からない。

 まして俺に理解できた事はと云えば、異なる民族の血統を引く、というだけで、同じ人間でありながらクラスメイトから、ご近所さんから、不当に遠ざけられ卑しめられた、という実感だけ。

 そうして俺たちは住みなれたY市を離れ、数少ない友人たちと別れ、古き良き気風を残す片田舎のO市へと、引っ越さなければならなかったのだけれど…

 そうした風潮…異なる種族を受け容れたくない、という…が、現実の歴史の中でその後どんどん強化されていったのだろうとは、容易に見当がつく。

 混血の俺や、かなりの人数がいた、日本人と寸分違わない外見をし、日本で生まれ育ち日本語しか話すことが出来なくなっているにも関わらず、日本国籍を持っていなかった、下町の人たち。

 そういった手合いを全て一括して血筋の違う "異民族" と呼び、 "エリート階級" と、はっきり相対する存在だと、決めこんでしまう程に…

(…何故なんだろう? 違う、という事を、それほど拒否しようとするのは…)

 答えの出ない、決して判らない、俺の永遠の謎々のひとつ…。

 ちょっとでも意識を向ければ、頭が痛くなる…。

「…磯原くん……きよしくん?」

 しかめっ面を誤解して、ティーカップを手渡してくれながら篤さんが顔を覗き込む。

「具合が?」

「いいえ。ちょっと…考え事しちゃってて。」

「…しかし…。…美形なんだな…。華奢で。」

 …つくづくと人の貌を無断で観賞した挙げ句に、風変りだが確かに 美人だ と、男に対して使う場合には必ずしも純粋な誉め言葉ではないんじゃなかろうか…という、神経を逆撫でする形容詞でひとりごとめいて断言する。

 その頃には俺にも、この人のはO市民の大半が見せるのと同じ、不躾だけれど率直な、人間的な好奇心だけなんだ、という事は判っていたけれど。あまつさえ彼は先刻の暴力沙汰について謝ろうとさえ、してくれたのだけれど…

「…さっきはいきなり悪かったな、お嬢さん。」

 ……ぷーーーーーーーー~……………っ。

 …さも気の毒そうに、それでもこらえがたくて、つい吹き出す。だなんて。

 それは無いでしょう。篤さん………。

「…え? どうしたんだ? 篤。」

 …え~~~~~い。

 もう、もう、当分コイツとは口きいてやらねぇぇぇぇぇ…っ!!



「…いや、胸が無いから男かな、とも思ったけれど…、ボーイッシュに見える美少女かな、と。…おれとしては気をまわして、だな。いや、だから…っっ」

 篤さんを相手に慌てて弁明を試みているけど、俺、聞いてやんな~いっ。

「…だって実際、年齢も性別も判らない顔をしてるじゃないかっ」

 しばらくツブクサほざいていた後、気を取り直して、

「まあいいや。…ところで、ヨリム女史はどんな具合だい? 姿が見えないが。」

 …びく。

 と、機嫌よく苦笑していた篤さんの肩が、こわばってしまった…。

「…………亡くなったよ。…彼に、手伝ってもらって、 "淵" に、…沈めてきた…。」

「………!!」

 近親者である篤さん程ではないとは云え、タツト氏にとっても少なからずその報せは打撃であるようだった。

「………そうか…。」

 言葉少なに手にしたカップに視線を落とす。

「……ブレイン(参謀)・ヨリムは、素晴らしい女性だったな…。緻密で情熱的で、おれも、もうずっと、本気で憧れていたよ…。

 …ただ、少しばかり、彼女は愛しすぎたんだな…心が壊れるほどに…」

「…ぼくが、彼を、救けられていたら…?」

「篤。おまえはその脚を犠牲にした。…それで十分だろう…?」

 怒ったように。

「………おまえの気持ちは解るが……、あまり、気を落とさないでくれ。花夢ちゃんだって居るんだし。」

 ああ、大丈夫だよ。と、篤さんは声だけで微笑んだ。

「ところで今日の用は?  "お茶を喫みに" 来る日じゃないだろう?」

「………ああ。うん。シナモンスティックを届けに来たんだ。えぇと…」

「カムちゃん、向うに行って遊ぼう。」

 タツト氏の視線を感じとって俺は席を外した。

 説明をされなくても、ここまでくれば大体、見当はつくというもんだ。

  "裏側" だ。

 篤さんが最初この俺もその所属だろうと思ったという、反政府の地下活動組織の、なんの事はないここは連絡場所として使われている店なのだった。

「…………ろしあカクメイって、なぁに?」

 俺のイメージが「聴こえて」しまったのだろう、カムちゃんが大きな瞳をして見上げていた。







https://www.youtube.com/watch?v=ekIZRyTyVLI&index=27&list=RDJKBiO2MZSvg
Daishi Dance feat. Yoshida Brothers Renovation 吉田兄弟 (Full Version)

https://www.youtube.com/watch?v=2unb1Cf04EI&list=RDJKBiO2MZSvg&index=27
Yoshida Brothers - By This River (Subtitled)

https://www.youtube.com/watch?v=tYQgKsY8u6U&index=27&list=RDJKBiO2MZSvg
Keisho Ohno|YOAKE - MV


>親父は元フリーのカメラマンで、外国暮らしが長かった。
 ↑
参照:http://p.booklog.jp/book/108710/read
リステラス星圏史略 古資料ファイル 5-2-0 『 水 恋 』


https://www.youtube.com/watch?v=Ar-lK0r8hY0&list=RDJKBiO2MZSvg&index=27
和楽器による戦場のメリークリスマス

コメント

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2016年11月23日22:21

cmk2wl ‏@cmk2wl · 12時間12時間前
関東、東海は現在。
中部、紀伊半島あたりまでが東電福島原発の風下になるかもしれません。

cmk2wl ‏@cmk2wl · 13時間13時間前
原子力規制庁「機器不具合の影響から線量値が変動する場合があります。また、現在、正常稼働に向けて対応中です。」
同じことしか言えないの?
「不具合」で納得させられる人たちばかりじゃない。

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2016年11月23日22:22

…0
58…
92…国?
92…苦荷…?

…w(^■^;)w…。

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2016年11月23日22:27

特務機関NERV ‏@UN_NERV · 3時間3時間前

【緊急地震速報 最終報 2016年11月23日 19:02】19時0分頃、小笠原諸島西方沖を震源とする地震がありました。震源の深さは約10km、地震の規模はM6.1、最大震度2と推定されています。詳しい情報が入り次第お伝えします。

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