https://www.youtube.com/watch?v=DJz8b95Rw8o&list=PLVBxO3o-avAcDIhDc2GVVdLkDh_BaoK2P&index=10
Gregorian - Hymn


 ディカールと呼ばれるその少年が父に連れられてトゥリアンギア公領を旅して行ったのは冬も始まろうという枯雨月(かれうづき)。森の育ちにはただでさえ平原の秋は興趣深く覚えるものを、金に銀に華やぐ長草の舞うなかで、ひときわ鮮やかなに彼らを追い越して遠野を駆せる白馬の姿が目を魅いた。

「父上、父上」
 生来おちついた温和しい息子の歓声に驚いた養父が顔をあげる。


「父上~!」
 身についた温和しさも忘れて養父のもとへと走り寄る。火の仕度をする父親は珍しい歓声にひどく驚いた顔をした。

「あれあの御方はどなたです? 平野の貴人は馬が巧い! 父上なら御存知でありましょう」
 問われて見遥かせば、折しも陽の傾こうとする金炎の平原に、白銀燃えたつ白馬を乗りこなし少年と同じほどの背の高い童児が行く。

「…はてトゥリアンギアの、黄金の髪をした貴公子といえば」



https://www.youtube.com/watch?v=wRV3XEyHrDw&list=PLVBxO3o-avAcDIhDc2GVVdLkDh_BaoK2P&index=11
Gregorian - Hallelujah



 ディカールと呼ばれるその少年がトゥリアンギア公領を旅して行ったのは冬も近づこう枯雨月(かれうづき)。森の育ちにはただでさえ平原の秋の風情はおもしろく思えるものを、金に銀に、華やぐながし草の舞うなかを、ひときわ鮮やかに遠野を駆せる白馬の姿が目を魅いた。

「父上、父上!」

 物静かな性(さが)も忘れたように養父のもとへと走り寄る。火の仕度をする老騎士は珍しい歓声にひどく驚いた顔をした。

「あれを行かれる御方はどなたでしょう。名のある家中に違いない」




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