◎シーンNo.2
暗転。ニワトリの鬨の声。朝の風景。
村人たちは早々に起きだして、三々五々、狩の仕度をしたり畑に出たりしている。
周囲のものより一回り大きな造りの長の家の、中庭風の場所で、井戸の順番を待っている女たち。
背後で一室の窓がばたんと開いて、伸びをするように若者が姿を現す。
井戸の傍らの緑や茶色の地味な山装束の女たちの間から、ひとり白い服を着ている少女、振り向いて若者の方へ歩みよって来る。
肩に留まっている獣。
少女「お早うございます。よくお休みになられまして?」
若者「お早う。あなたに貰った薬酒のおかげだよ。」
少女(はにかんで)
「薬草を扱うのがあたしの仕事なんです。薬司(くすりのつかさ)ですもの。」
(薬草カゴを示して見せる)
若者「腕がいいんだね。…山へ入るのかい? 近頃ではこの辺りにまで鬼が出て、危ないと聞いたけれど。」
少女「この川の(身振りで示して)こちら側なら、普通は大丈夫ですわ。伊豆が冷たくて鬼たちは渡れませんの。それに… どちらにせよ、あたしには無闇と手出しはしないので。」
ふっと翳る瞳。若者は魅入られたようにその顔かたちを見つめている。
戸惑って頬を染める少女。
若者「…あ、いや、すまない。あなたがあまり、わたしの妹に似ているもので、つい…」
少女「まあ、妹さまに?」(ふっと微笑して)「よろしければ御一緒にいらっしゃいません? あたし、この辺りを案内してさしあげられると思いますわ、旅の御方。」
若者「ミヤセルだ。ミルドーとメレアの息子、ミヤセル・アテナムン。」
少女(一礼して)「どうぞ、ミヤセルさま。…あたしはマシカ。星の娘のマシカって呼ばれています。捨て児だったので親はいません。この村のみんなが育ててくれました。」
村の道を連れだって歩いて行くふたり。
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