今日は2頁目を、ここまでガンバリました。
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(「非公開」頁です。)

 (^^;)
 長いでこぼこの坂道の途中で、朝のはじまりがはやい港町の、午前のしごとの終わりを告げる時の鐘が、鳴り渡るのが聞こえてきました。

 リアはまだ、たったの十三歳です。それなのに、もう、働いて、働いて、へとへとで……

 やせっぽちで目ばかり大きい顔に、日焼けして真っ黒になったカサカサのそばかすだらけの肌に、年より小さい背丈で、妹たちとおたがいに切りっこしている日にやけて色のおちた髪の毛は不ぞろいのバサバサで、くくっているヒモはチビどもが使わなくなったオシメの布の端切れ。いつも着ているぶかぶかの作業着は、何年も前に漁に出たまま嵐で亡くなった父ちゃんのお古を、自分で縫いつけて小さくしたものです。

 リアは、働きます。

 大好きだった爺ちゃんと父ちゃんが遺してくれた、たいせつな、農場なのですから……



 ……ようやくの思いで激しい汗をたらしながら、港を見下ろす高い岬のはずれの古い古いボロい家にたどりつくと、やかましく泣きわめくチビどもの声がひびいてきました。

 「……あんたたち、ナニやってんのッ!?」

 「うるさいよッ! ナかすなーーーーーっっっ!」

 リアが叫びながらおもての扉をあけるのと、もっと大きい金切り声がひびいて奥の扉がひらくのが、同時でした。

 「リア、あたしのアサメシはッ?」

 おかえりなさいも言わず、カラのオタマをふりまわして、彼女はそう怒鳴ります。

 リアは、キレました。

 「アサメシ!? ……かあちゃん、もう、とっくにおヒルをスぎてんだよ……ッ!?」

 リアも、上の2人も、お金がないからガッコウに行くこともできないまま、文字をならうこともできないままで、朝からせっせと働いて、自分が食べるための分と、小さい弟たち妹たちに食べさせるための分を、いっしょうけんめい、稼いできているというのに……

 かあちゃんときたら、いつも太陽が頭上をすぎたころにのそのそと起きてきて、髪はぼさぼさ、はれぼったい目はまだ半分とじたまま、吐く息は酒臭くて、服はときどきゲロで汚れてさえいて、化粧だって昨夜遅くに帰ってきたときのまんま、くずれてグシャグシャで、まるでおばけのようです。



 「ヘリクツいうんじゃないよッ! アサおきて、サイショにくうメシなんだから、アサメシでけっこうだッ!」

 「どっちがヘリクツなんだよッ?」

 「ウルサイッ! だれにソダテテもらったとオモってるんだッ!」

 「ソダテてなんか、ないくせにッ!」

 「なんだとぉッ!!!!」

 ふたりの怒鳴りあいはいつものことですが、いつものことでも哀しくて、中の2人は身をすくめて壁のそばに寄り、小さい2人は大きな声で泣きわめきはじめてしまいましたが、そんなことは、おかまいなしです。

 「あたしをソダテてくれたのは、じいちゃんだよッ! かあちゃんなんか、とうちゃんシんでから、サケのんでアバレテばっかりじゃないかッ!」

 「スキでサケなんかノムかいッ! アンタタチのために、シカタナく、おカネがヒツヨウだから……っ」

 よるのみなとまちで「働いている」、と、かあちゃんはいつも、言い張っているのですが……。

 「そのカネ? このまえ、いつ、うちにイレたんだよ? もう、マエのツキがマルかったころからずっと、あたし、もらってないよッ!」

 それは、ほんとうのことでした。

 「……う、ウルサイッ うるさいッ ウルサイッ!!!!」

 かあちゃんは、地団駄をふんで、下の小さい2人よりもっと、手のかかる赤ん坊のように泣きわめき始めました。

 「あたしがッ! だれのせいでッ! だれのために……っ!!!!!!」

 「シらないよ!」

 リアは、あいてにしないで、怒鳴り返しました。

 「あんたなんか、ダイッキライ!!!!」
 …… かあちゃんは、「えっ!?」という顔で、とても驚いたように、傷ついたかおをして、凍りつきました。

 ふたりのけんかは、いつものことでしたが、そういえば、嫌いとか、そう言ったことは、今まで、なかったかも、しれません……

 リアが、まだ怒りがおさまらないまま、それでも、かあちゃんの両目からみるみるうちにあふれ出してきた涙の山を、見て、こころが、ずきっと、したとき……




 あえなく「時間切れ」~★★

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