前項から続きまして……(==#)★
 約束通り払ったのに
 突然 差し押さえ予告

 国民健康保険の保険料が高くて払いきれず滞納した人の預貯金や生命保険などを差し押さえる動きが全国に広がっています。昨年以来、財産調査や差し押さえが激増している大阪市では-。


 国保料の滞納処分激増
 大阪市では

 同市の南東部、住宅が密集する平野区で、夫(74)と息子(40)とともにシャッターの取り付け・修理業を営む(略)さん(64)のもとに「差押の予告」が送られてきたのは昨年末。「期日までに納付されない場合は、法律の定めにより、あなたの財産(給与・貯金・不動産等)の差押えに着手いたします」とありました。請求額は2008~10年度の35万6831円。国保料31万1311円に加えて延滞金(年利最大14.6%)と督促手数料が加算されていました。
 「区役所と約束した通り、毎月きっちり分納で払っとったのに…どうして」。(略)さんはびっくり。区役所に行くと、担当者から財産調査の結果、支払い能力があることが分かったと告げられました。思い当たるのは夫名義の30万余の定期貯金しかありません。
 業者にとって銀行口座の差し押さえは信用に関わります。なけなしのお金をかき集め、今年1月全額払いました。「老後のわずかな蓄えまで差し押さえの対象にするなんて、あんまりですわ」と(略)さん。


 区役所に相談し

 得意先の廃業・倒産で仕事が激減。追い打ちをかけるように09年夏、息子が仕事中に4メートルの高所から転落し、昨年秋まで休業補償を受けました。いまも片手が不自由です。
 所得は夫の国民年金を入れても200万円強。なのに賦課される国保料は約32万円で所得の15%以上です。
 国保料は07年度まで完納していました。08年度から払えなくなり分割納付してきました。
 今年度の国保料は本来、約3万2300円ずつ10回払いです。しかし月約20万円の収入から市営住宅の家賃(月3.8万円)や水光熱費(同2.5万円)、医療費などを引き、3人の食費をまかなうと国保料は全額払えません。そこで民商の仲間と一緒に今年も区役所へ相談に行き、毎月1万8000円ずつ払うことになっていました。08年度も09年度も同じように払ってきました。
 「必ず払わないかんからと、生活費とは別にとっておいて毎月払ってきました」と(略)さん。そこへいきなりの差し押さえ予告です。
 「確かに督促状は来てました。そやけど区役所の人は『分納してるから関係ない』と言いました。だから差し押さえなんて思ってもみんかった。息子も『まるで金貸しみたいや』と怒って…」。目を赤くし声を詰まらせます。


 生活と営業破壊

 (略)さんと一緒に区役所に出向いた平野民商事務局(略)は、「息子さんは休業補償が切れたけどまだ仕事ができない。多少の蓄えがあっても食いつぶしてしまう。わずかな預金まで差し押さえて生活保護を受けざるを得なくなったらどうするのか」と憤ります。
 同民商では分かっているだけでも7人に差し押さえ予告が来ました。同事務局(略)は「生活と営業を破壊する差し押さえはやめるべきです。所得200万~300万円の世帯は減免制度の適用にもならず負担が重い。減免制度を拡充し国保料を下げることが急がれます」と語ります。


 子どもの学資保険まで

 いま大阪市は国保料の滞納処分を急増させています(略)。今年度は5万4627世帯(1月末現在)の財産調査を実施。滞納世帯約14万世帯(加入世帯の約3割)の39%に及ぶ大規模なものです。
 このうち446世帯の不動産、債権を差し押さえ処分しており、「順次、換価(現金化すること)の手続きをとっている」(同市国保収納対策担当課長)といいます。
 そのなかで目立つのが103世帯を占める学資保険(略)です。情報公開制度で、当事者に送られた差し押さえの書類を入手した大阪社保協(略)事務局長が怒ります。「学資保険は、高校・大学受験等のために小さなころから積み立てている子どもの未来のためのお金。差し押さえるのは子どもの未来を奪うものです」。


 背景に「広域化」

 市が滞納処分に躍起になる背景にあるのが、国保を都道府県に運営させる国の「国保広域化」政策。それにもとづき大阪府は昨年「国保広域化支援方針」を策定しました。方針では、市町村に国保収納率の目標を課し、滞納者への速やかな財産調査と処分を要求、収納率によって府の負担金(財政調整交付金)を勘案するとしています。
 同市は「広域化も視野にいれ、平成25年度までの短期間で収納率を改善することを目指」し、昨年9月から滞納処分を強化させました。
 並行して保険証の取り上げも強めました。昨年11月の保険証更新時には、
①2010年度、09年度に滞納がなくても08年度に1円でも滞納があれば郵送せずに、通常保険証を区役所に取りに来るよう通知を出す、
②09年度の滞納が1円でもあれば、通常保険証を短期証に切り替え、区役所に取りに来るよう通知を出す
-ことが行われました。取りに来た人には徴収の時効をふせぐため未納額承認書にサインさせることまでしました。
 その結果、約2カ月間、約2.4万世帯が無保険状態におかれ、そこには18歳以下の子ども3000人が含まれていました。


 下げることこそ

 「収納率をいうなら、高すぎる国保料を下げることこそ急務だ」というのは日本共産党の北山良三市議です。日本共産党市議団は、国が1984年以来、国保への国庫負担を削減してきたことが国保財政の悪化を招いたとして、市が国に国庫負担増額を求めるよう主張してきました。
 また同市の国保料算定方式の問題点を指摘。所得300万円で40歳代の4人世帯の国保料は50万5025円で、支出の少ない単身世帯より約8万4千円高いという実態を示し、
①所得割に各種控除を反映させる
②平等割を1万円引き下げる
-ことを提案しました。(略)
 17日の大阪市議会開会日、市役所前では約300人が「高すぎる国保料は払われへん!」とアピール。国保料引き下げ、減免制度の拡充、国保証の取り上げや無差別な財産差し押さえの中止を求める9500人分の請願署名を市議会に提出しました。(略)
 「国保は国民皆保険の根幹をなす社会保障制度です。国に国庫負担をもとに戻させるとともに、あらゆる方法で、払える国保料に下げさせ、乱暴な保険証取り上げや、差し押さえをやめさせたい」と語っています。

(内藤真己子)
(日本共産党 http://www.jcp.or.jp/
 機関紙「しんぶん赤旗」http://www.jcp.or.jp/akahata
 2011.02.26.)



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