波動
 命の消費 迫る国家

 「大本営発表!」で始まるやや甲高い怒号調のアナウンスで“玉砕”という言葉を知ったのは67年前-。その時の異様な印象をなぜか今も思い出すことができる。アッツ島玉砕のニュースは、子ども心にも、何ともいえぬ暗い不吉な響きを残した。
 この夏、たぶん初めてだと思うが、無惨なアッツ島守備隊全滅の模様が明らかになった。NHKスペシャル「玉砕~隠された真実」(8月12日)である。
 戦後65年の歳月は証言者の数を激減させた。が、郡部や政府と資料や証言との利害関係が薄れてゆき、ようやく露(あら)わになった真実も多い。パプアニューギニアほかの島々で「敗残兵は死んで当然」という戦陣訓が容赦なく玉砕を強制したことがよくわかった。「ほとんど武器はなく、叫び声をあげながら向かってきた。バンザイ自殺だ」という米軍兵士(94歳)の証言に胸が潰(つぶ)れた。
 ことし、8月6日から15日にかけてNHKが放送した「証言記録」(再放送を含む)は十指に余る。なかでも衝撃的だったのは「ベニヤボートの特攻兵器~震洋特別攻撃隊」(8月10日深夜)だ。
 敗戦の前年、もはや飛ぼうにも飛行機はない。50メートルほどの緑色のベニヤ板製ボート“震洋”に兵士を乗せて米艦に体当たりさせるのである。「ベニヤ板ってあんたたち知っとる? 拳骨(げんこつ)一つで穴があく。そんなもんに乗って爆弾積んで行けるかね、どう思う?」と語った証言者は81歳だった。逆算すれば、当時彼らは16歳である。震洋で被害を受けた米艦はわずか4隻、特攻側の死者は250人にのぼる。これほど無謀な命の消費を迫った国家に、国民はなぜ背かなかったのか。それは今後にもつながる大問題だ。
 この「戦争証言プロジェクト」は戦後70年まで続けられ、アーカイブやネット上でも見られるそうだ。(略)ようやく若者にも根づきつつある日本人の“平和常識”に訴える新たなドキュメンタリーを、今後どのようにつくり続けていくか。公共放送NHKに課せられた戦後責任のように思われる。

(藤久ミネ/放送評論家)
(日本共産党 http://www.jcp.or.jp/
 機関紙「しんぶん赤旗」http://www.jcp.or.jp/akahata
 2010.09.06.)


>なかでも衝撃的だったのは「ベニヤボートの特攻兵器~震洋特別攻撃隊」(8月10日深夜)だ。

 ……あ~、それで今、コンビニに佐藤秀峰のあの漫画が置いてあるのか……?

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