(今日の・7)
 読書
 ドキュメント 高校中退
 -いま、貧困がうまれる場所
 青砥 恭(あおと・やすし) 著
 子どもを社会全体で支える意味問う

 毎年7万人前後の高校生が学校を辞めていく。ここには他課程への転学者は中退に数えず、全国で18万人余が在籍する通信制からの中退は含まれない。著者は「非卒業者率」という数値を使って文科省の中退率の「低さ」のからくりを解明し、高校中退問題を切り口に、今日の高校教育が持つ深刻かつ重要な課題を提起している。労作である。
 高校授業料無償化が現実的な課題となり、教育を受ける権利を支える社会と学校のあり方が問われる中で、本書には重要な問題提起がある。
 第一は、「事実」の持つ重みである。さまざまな統計資料はもちろんだが、実に丹念に中退者から聞き取りをし、その実態と背景を明らかにしている。中退して学校を離れた青年たちの追跡はきわめて困難である。この青年たちから聞き取った事実を、今後にどう生かしていくかが問われているのではないか。
 第二は、高校中退の背景の解明である。著者は「やめる原因は複合的」としながら、貧困に焦点をあて、貧困によって生み出される高校中退が、さらに貧困を拡大していく「複合的」なしくみを実証的に解明している。多くの人によって解明される「子どもの貧困」研究にとって、重要な問題提起である。
 第三は、今日の高校教育政策の問題である。高校中退はいわゆる「底辺校」に集中している。埼玉・大阪の実態をもとに、高校中退や不登校などの問題と、家庭の経済困難(授業料未納・減免)、高校格差(教育格差)は今日の教育政策が生み出したものである。
 著者は、進学競争に熱心な行政関係者が、高校中退など若者の貧困問題に無関心であることを告発する。
 子どもを「社会全体で支える」ことの意味がいま問われている。

(日本共産党 http://www.jcp.or.jp/
 機関誌「しんぶん赤旗」http://www.jcp.or.jp/akahata
 2009.12,06.)



 現役高校生? ともっちちゃんに捧ぐ♪

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