遺族の立場から過労死の労災申請を呼びかける
諏訪 裕美子(すわ・ゆみこ) さん (45)
仕事に追われ、命を絶った弟の過労死から九年。労災申請の仕方がわからず、悩みを抱え込む遺族の姿は、当時の自分を見るようでした。「独りぼっちで困っている過労死遺族をなくしたい」。遺族や支援者の経験を役立ててもらおうと、『過労死の労災申請』(色部祐・共著、自由国民社)を出版しました。
弟の達徳さん=当時(34)=は大手建設機械メーカーの研究員でした。「僕の仕事量は三人分だ。疲れた」。友人に言い残し、独り暮らしのマンションから飛び降りました。
深夜や休日まで働き詰めに働いていたことはわかっていました。会社の責任を明らかにするため、上司らの証言を求めて奔走。毎晩、銀行勤めを終えた帰宅途中の駅の公衆電話から弟の働き方を尋ね、休日は面会に歩きました。上司らは何を聞いても口を閉ざし、怒鳴り返されもしました。
心労が重なり、「自分も死んだ方が楽だ」と何度も考えました。しかし、「申請しないと会社に免罪符を与え、さらなる過労死を生むだけだ」。一カ月で約三十人の証言を集めました。
労災は、申請から二年八ヶ月で認定されました。支えと生きる勇気をもらったのが、申請後に出合った支援団体「働くもののいのちと健康を守る会」でした。
出版後、遺族の読者から「労災を申請したい」との手紙が届き、報われました。「過労死のない社会にしたい」。申請が、その一歩になると呼びかけます。
(文・酒井 慎太郎)
(『しんぶん赤旗』2008.05.23.
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