https://85358.diarynote.jp/201909082036534486/
の続き。



     ◇





 彼女も夢を視ていた。

 遠く離れた辺境探査艦内で、親しい人たちの間で何やらささやかだが奇妙な異変が起きている、らしい、ということだけは他の知人の乗組員たちから、そこはかとなく仄聞していた。
 肝心の一番親しい仲間たちときたら、いつものごとく、例によって、…だ。

「心配かけたくなかった」とでも言い訳をするつもりだろう。
 当たり障りのない日常の連絡報告ごとしか、通信を、寄越さない…

 遠く離れた艦艇に、自分も追いつく夢を視た。
 もちろん自分は科学者ではない。乗っても艦内で担える任務はない。
 こちらに自分の役割はある。ソレル女史の留守を守り、有り余る資産と人財を管理し、後継者たちを育て、国際間・企業間などの大規模なトラブルの仲裁に入り、名代として会議や行事にも参加し、親善親睦を図り…

 けして、置いて行かれたわけではない。役割が、別だったのだ。それだけだ…

 けれど淋しかった。ずっと寂しかった。いつもいつも、日々に、日ごとに、

 虚しさばかりが募っていった…





     ◆





 ふと気づくと、夢のなかで自分は筋骨隆々たる流浪の戦士だった。
 傭兵というやつだ。

 まるで若い人たちの好む迎夢の世界のようだわと、くすりと笑った。
 そこまではエリーも(これは夢ね?)と…、自覚していた。





     ◆





 自分は戦士だった。
 恋人は、吟遊詩人だった。

 美しく、儚く、薄幸で、苦労して…
 傷ついて。

 自分が護ってやりたいと思った。守れると、思いこんでた。
 
 傷つけた。

 そんなつもりでは… なかった。

 恋人は逃げた。うろたえる自分から。

 すぐに戻ると思って待った。動けばすれ違いになってしまうと。

 戻って、来なかった…

 待って、待って、待った。

 それから、追った。

 追って、探して、追い求めて、

 …恋、焦がれて。

 再会できたら、再会できさえしたら。

 どんなことをしても詫びようと。跪いて、赦しを請おうと。

 追って、追って…

 探し、求めて…

 そして。





     ◆





 冷たい屍を、自分は見つけた。

 恋人は、自分を、待っていたのに…

 すぐ、追ってくるはずと、すぐ、近くで…

 待って、いたのに。




     ◆




 追うことをためらった、面倒がった。

 自分を、待って。

 恋人は、自分のいた、すぐそばで。

 冷たい冷たい、骨に…


 骨に、なっていた。




     ◆




 彼女…エリザヴェッタは、慟哭しながら撥ね起きた。

 自分は…また!

 同じ、失敗を…!

 しようとしていた、のでは…ッ??




     ◇





 跳ね起きて、即、願望を。

 行動に、移していた…






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