https://85358.diarynote.jp/201908172141208276/
の続き。(--;)
◇
なんとかかんとか。
周辺に、微妙に怪訝な顔をされながらも、サキ・ランは、少なくとも表面上は、常に変わらぬ平静を…しばしば八方美人!と身内からは酷評されさえする、穏健で不変で真意の読めない笑顔を、保ちつつ、過重な職務に集中しようと、…努力してはいた。
ともすれば、思考は泥沼の悪夢のなかに、引き戻されようとする…
「…おい!」
案の定、聴きなれた、苛苛した声が、邪魔をしに来た。
「おい!」
「…なに?」
「なにかが色々、すご~く、変だと。あたしは思うんだが?」
「なにかが色々。とはまた、…具体的には?」
韜晦してみるが、釣られる相手ではない。
「誤魔化すな。あんたが気がついてないはずはないだろう?」
「買いかぶっていただきまして…」
「おい?」
サキは「最近老眼で…」と冗談めかして愛用している細い銀のふちの超旧式な硬化ガラス製の薄い光学眼鏡をはずして、やれやれと、疲れた眼をこすった。
「ソレル女史とドク・マリアは、たしかにここ数日、ものすご~く、変だねぇ?」
「今朝から、あんたもだろう?」
「…いちいち気がつかなくていいのに…」
「あん?」
「他には、誰と誰に気づいた?」
「…ラルブと、オロ。ヘレナも昨日の仮眠からだろ? 今朝はアサトと、ミドルと、エドと、オーバと…?」
指折り数えるようにそらんじていく人数の多さに、サキはげんなりと、頭を抱えた。
「やっぱりか…」
「他にもいたか?」
「いや、私の観察結果と一致。」
「じゃあいいだろ」
「多すぎる!」
「だな?」
会話の相手である、サキ・ランの相方(と自称している)ジースト星系人、レイズは、青い髪をかきあげながら、金色の瞳をすがめた。
「なんなんだよ? これだけ人数揃えて、いきなりみんな【夢見が悪い】っつぅのは…」
「空調食糧飲料に投与薬剤に電波音波電磁波、気波に霊波。疑わしいと思える要因は一応全部、調査はさせたんだけど、」
「やっぱシゴト速ぇえな」
「今のところ、特に怪しい状況変化はなし。」
「ふ~ん…」
レイは腕組みして唸った。
「で、明日はもっと、増えてそうな気がしないか?」
「するねぇ…」
サキも邪魔な前髪をかきあげながら、苛苛と呟いた。
これじゃ、仕事にならない…。
◇
「…ちょっと! レイ!?」
お茶(ティレイカ)でも淹れて一服しようと作業画面を仮保存して立ち上がったサキ・ランに片手を伸ばして、ひょいと軽く担ぎ上げた長身大柄の相棒に、それなりに地球人女性としては大柄であるはずのサキは慌てて、もがきながら抗議した。
「どうせあんたも『眠るのが怖いわ~★』とかいって、徹夜で仕事しようかって組だろう?」
「…も?…」
引っかかったので、肩の上で暴れるのを一旦停めて聞き返す。
「ソレル女史もヘレナもドク・マリアも他の連中も、判で押したようにそー言ってたんで…、まとめて昏倒させてきた」
「…おたくねぇ…」
サキは肩の上で脱力して呆れる。
「脳波記録を診るかぎりじゃ、悪夢とやらで魘されてるとかの間も、一応、からだは休めてるんだぜ?」
「それは確認したけど…」
「とりあえず寝とけ。さっきから明らかに、作業効率が下がってたぜ?」
「…それは、そうなんだけど…」
眠れない。のだ…
「寝かしつけてやるから?」
どさりと、寝床に放り降ろされて、サキ・ランは慌てた。
「…レイぃぃぃッ?」
この同性の(はずの)友人は、時々だが、思い出したように性的な干渉を仕掛けて来る。
本人は、サキのことを愛していると、言う。
…友人。だとしか、想ってはいない。のだが…。
「…あッ!」
いきなり、脳内に、快楽を… 性的快感の、刺激を…
打ちこまれて、サキは揺れた。
「眠りたいんだろ?」
「…やめろってぇ…」
気波技術者(エスパッショノン)の多いジースト星系出身者のなかでもとりわけ超絶級と称賛されるほどの高い能力を誇る《微細念動力》もちのレイは、直接、サキの脳を弄ることができる。
「…ッ!!」
悔しければ抵抗してみろとかいつも笑いながら嘯くが、本来、サキは快楽には流される性格だ。貞操観念というほどのこだわりも、ない。
「…ッ! …ッ!? …ッ!!!!!」
物理的には、同性の、大事な親しい友人から、ただゆるく…抱きしめられて。
体温と安心感だけを、与えられながら…
脳に。直接。
「………アッ! ………ァァぁぁぁあッ! …?! 」
絶頂感を。
たたきこまれて…
あられもなく、揺れて…
叫んで。
◇
まもなく、サキは、はずむ息をおさえるようにしながら…
すぅと。
寝入った。
「…寝てるときだけは、可愛いんだけどな~…」
つれない恋人?の横顔を眺めながらレイも傍らでごろりと転がり、目を瞑る。
明日の朝、もう一度、いたぶって、遊んでやろう………。
◆
…暗い昏い…
黄昏色の…
閉ざされた、城塞で。
上司だった。ほかの相手に惚れていた。
心の底から、わき目もふらずに、我が身もなげうつほどに…
惚れ抜いていた。
ただ、後ろから、見守るしかなかった。
できれば、幸せになってほしかった。
気の毒な、恋をしていた…
(…なら、なぜ、俺にしない?)
時折、激発して告白しそうには…なった。
言えなかった。
冷たい眼が。
自分を斬り捨てるのではないかと、
怖くて…
言えなくて。
想い人を喪って。
観るも無残に。
取り乱し、やつれて、病んで、心を失って…
死んだ。
後悔した。後追い自殺をするほどには。
なぜ。
なぜ。言わなかった?
なぜ。
どうして、引き留めて、振り向かせて…
幸せに、して、やることが…ッ!?????
◆
「……… レイッ? レイ、どうした? レイッ?」
揺り起こされた。
「………ッ?!!!!!」
跳び起きた。
「…レイ………???」
「 ……… くっそ! これかよ………ッ!???」
レイは、唸った。両手に顔を埋め、
…哭きながら…
サキは了解した。ただ肩を抱いて哭き止むのを待つしかなかった。
◇
その日。
ついに全艦に病は広がり。
まともに職務に就ける精神状態の者は…
無かった。
の続き。(--;)
◇
なんとかかんとか。
周辺に、微妙に怪訝な顔をされながらも、サキ・ランは、少なくとも表面上は、常に変わらぬ平静を…しばしば八方美人!と身内からは酷評されさえする、穏健で不変で真意の読めない笑顔を、保ちつつ、過重な職務に集中しようと、…努力してはいた。
ともすれば、思考は泥沼の悪夢のなかに、引き戻されようとする…
「…おい!」
案の定、聴きなれた、苛苛した声が、邪魔をしに来た。
「おい!」
「…なに?」
「なにかが色々、すご~く、変だと。あたしは思うんだが?」
「なにかが色々。とはまた、…具体的には?」
韜晦してみるが、釣られる相手ではない。
「誤魔化すな。あんたが気がついてないはずはないだろう?」
「買いかぶっていただきまして…」
「おい?」
サキは「最近老眼で…」と冗談めかして愛用している細い銀のふちの超旧式な硬化ガラス製の薄い光学眼鏡をはずして、やれやれと、疲れた眼をこすった。
「ソレル女史とドク・マリアは、たしかにここ数日、ものすご~く、変だねぇ?」
「今朝から、あんたもだろう?」
「…いちいち気がつかなくていいのに…」
「あん?」
「他には、誰と誰に気づいた?」
「…ラルブと、オロ。ヘレナも昨日の仮眠からだろ? 今朝はアサトと、ミドルと、エドと、オーバと…?」
指折り数えるようにそらんじていく人数の多さに、サキはげんなりと、頭を抱えた。
「やっぱりか…」
「他にもいたか?」
「いや、私の観察結果と一致。」
「じゃあいいだろ」
「多すぎる!」
「だな?」
会話の相手である、サキ・ランの相方(と自称している)ジースト星系人、レイズは、青い髪をかきあげながら、金色の瞳をすがめた。
「なんなんだよ? これだけ人数揃えて、いきなりみんな【夢見が悪い】っつぅのは…」
「空調食糧飲料に投与薬剤に電波音波電磁波、気波に霊波。疑わしいと思える要因は一応全部、調査はさせたんだけど、」
「やっぱシゴト速ぇえな」
「今のところ、特に怪しい状況変化はなし。」
「ふ~ん…」
レイは腕組みして唸った。
「で、明日はもっと、増えてそうな気がしないか?」
「するねぇ…」
サキも邪魔な前髪をかきあげながら、苛苛と呟いた。
これじゃ、仕事にならない…。
◇
「…ちょっと! レイ!?」
お茶(ティレイカ)でも淹れて一服しようと作業画面を仮保存して立ち上がったサキ・ランに片手を伸ばして、ひょいと軽く担ぎ上げた長身大柄の相棒に、それなりに地球人女性としては大柄であるはずのサキは慌てて、もがきながら抗議した。
「どうせあんたも『眠るのが怖いわ~★』とかいって、徹夜で仕事しようかって組だろう?」
「…も?…」
引っかかったので、肩の上で暴れるのを一旦停めて聞き返す。
「ソレル女史もヘレナもドク・マリアも他の連中も、判で押したようにそー言ってたんで…、まとめて昏倒させてきた」
「…おたくねぇ…」
サキは肩の上で脱力して呆れる。
「脳波記録を診るかぎりじゃ、悪夢とやらで魘されてるとかの間も、一応、からだは休めてるんだぜ?」
「それは確認したけど…」
「とりあえず寝とけ。さっきから明らかに、作業効率が下がってたぜ?」
「…それは、そうなんだけど…」
眠れない。のだ…
「寝かしつけてやるから?」
どさりと、寝床に放り降ろされて、サキ・ランは慌てた。
「…レイぃぃぃッ?」
この同性の(はずの)友人は、時々だが、思い出したように性的な干渉を仕掛けて来る。
本人は、サキのことを愛していると、言う。
…友人。だとしか、想ってはいない。のだが…。
「…あッ!」
いきなり、脳内に、快楽を… 性的快感の、刺激を…
打ちこまれて、サキは揺れた。
「眠りたいんだろ?」
「…やめろってぇ…」
気波技術者(エスパッショノン)の多いジースト星系出身者のなかでもとりわけ超絶級と称賛されるほどの高い能力を誇る《微細念動力》もちのレイは、直接、サキの脳を弄ることができる。
「…ッ!!」
悔しければ抵抗してみろとかいつも笑いながら嘯くが、本来、サキは快楽には流される性格だ。貞操観念というほどのこだわりも、ない。
「…ッ! …ッ!? …ッ!!!!!」
物理的には、同性の、大事な親しい友人から、ただゆるく…抱きしめられて。
体温と安心感だけを、与えられながら…
脳に。直接。
「………アッ! ………ァァぁぁぁあッ! …?! 」
絶頂感を。
たたきこまれて…
あられもなく、揺れて…
叫んで。
◇
まもなく、サキは、はずむ息をおさえるようにしながら…
すぅと。
寝入った。
「…寝てるときだけは、可愛いんだけどな~…」
つれない恋人?の横顔を眺めながらレイも傍らでごろりと転がり、目を瞑る。
明日の朝、もう一度、いたぶって、遊んでやろう………。
◆
…暗い昏い…
黄昏色の…
閉ざされた、城塞で。
上司だった。ほかの相手に惚れていた。
心の底から、わき目もふらずに、我が身もなげうつほどに…
惚れ抜いていた。
ただ、後ろから、見守るしかなかった。
できれば、幸せになってほしかった。
気の毒な、恋をしていた…
(…なら、なぜ、俺にしない?)
時折、激発して告白しそうには…なった。
言えなかった。
冷たい眼が。
自分を斬り捨てるのではないかと、
怖くて…
言えなくて。
想い人を喪って。
観るも無残に。
取り乱し、やつれて、病んで、心を失って…
死んだ。
後悔した。後追い自殺をするほどには。
なぜ。
なぜ。言わなかった?
なぜ。
どうして、引き留めて、振り向かせて…
幸せに、して、やることが…ッ!?????
◆
「……… レイッ? レイ、どうした? レイッ?」
揺り起こされた。
「………ッ?!!!!!」
跳び起きた。
「…レイ………???」
「 ……… くっそ! これかよ………ッ!???」
レイは、唸った。両手に顔を埋め、
…哭きながら…
サキは了解した。ただ肩を抱いて哭き止むのを待つしかなかった。
◇
その日。
ついに全艦に病は広がり。
まともに職務に就ける精神状態の者は…
無かった。
コメント
続く~☆
「…違う…
私が、
探しているのは…ッ!!」