https://www.youtube.com/watch?v=sdc_6YvJfFo
Ace of Base - Life Is a Flower (Official Music Video)



 そのあと。

 サキ達が徹夜で噴射管(ノズル)と機関系統の修理をし、基地…《エスパッション》号とやら…が盲目宙域(ブラインド・エアリア)の辺縁部まで移動するのに約三日。

 その間、漂流して去った海賊船を追いかけて肝心の証拠物件と、残されていた負傷者たちを回収したり、まだ使える救命艇を拾ってきて六十人近い海賊の大世帯を最寄りの保安局支部まで運ぶべく改装したり。

 なんだかんだで、慌ただしく過ぎて…


「ところでロルー,オディアさん?」

「おっと、つれないなあ。オードって呼んで下さいよ」

「あのねっ。」

 やっと一段落ついたティー・ブレイクで、あたしは軽くロルーをにらみつけた。

 他の連中はみんな怪我して船室(うしろ)で寝てるでしょ、借りつけた小型船をふたりだけで七十二時間動かさなければというので、操縦系統に若干手を加えて。

 これであとは食糧と空気(エア)を分けて貰えばいつでも出発できる、というひと時だった。

「真面目な質問よ。正直に答えて欲しいんですけどね」

「恋人ならいませんが?」

「…ロルー! あたしは地球連邦警察として…!」

「はいはい。シリアスに承りましょう。」

 …疲れる。……

「あのですねえ。」

 あたしは紅い前髪をかきあげながら言った。

 要するに、境界無視した一介の刑事のために何故、管轄ちがいの特務部が…それも正体を隠してまで…お目付役にまわされて来たのか、そこが知りたかったのだ。

「…正体、ばれるつもりはなかったんですがねー。…あの連中さえ…」

「ため息ついてみせたって駄目よ。」

 いくら国家機密が、黒星だ、とぼやいてみせたってもう遅い。

 本当をいえば外交儀礼上、警部ごときの無理に尋き出していい事じゃなさそうだというのは、判ってはいるんだけど…ね。

(リスタルラーナの特務部員というのは慣例として、ことごとく外交官特権を持っている…らしい。)

「しようがない。」

 しばらくあたしと睨めっこをしていたロルー、意外にはやく、ニヤリと照れたように笑って肩をすくめた。

あなたには話しておきましょうか。この計画、地球連邦では未だ政府総裁とその側近あたりにしか通じてないんですがね。

 御存知の通りここ数年、連盟(リスタルラーナ)でも連邦(テラズ)でも異様に急激に犯罪件数およびその未検挙率が上がっています。

 犯人が、見つけられないのではなくて居なくなる。

 ここから、お互いの犯罪者が高飛びをかけあっているのではという仮説が出てくるわけですが…

 逃亡者が単発的に現われるものであれば、まだ問題はないんです。

 しかし残念ながら、追いつめられた者がただ闇雲に国境を越える、という現象にしては、その数が多過ぎる。」

 …それに例えば、どう考えても地球の技術だけでは製造不可能な、" ゴクリの指輪 "(スメアゴルズ・リング)のスランナート事件や、自信満々でリスタルラーナ領宙に逃げこんで行った《 幽霊 》(ディリンゴーン)の態度。

 おそらく相方で連絡をとって犯罪者達を煽っている者がいる。

 従来の結社同士の協定か、悪くすれば両世界にまたがる規模の新しい組織群が出現しつつあるのか…。

「…そこまでならあたしも考えてたわ。で?

 まさか地球圏での情報が集まりにくいのでそれ以後の捜査が進まない、とか、こっちの責任にする気じゃないでしょうね」

 嫌味たっぷりに云ってやった。

 連盟保安局と地球星間警察とのぎごちなさの原因は一重(ひとえ)にリスタルラーナ側の非協力性にあるのだ。

 逃げ込むと判っている船を迎撃してくれず、我々の追跡はしりぞけ、逮まえても送還してくれない。

 …どれだけ口惜しい思いをしてきたか。

「しかし仮に保安局と地球警察が情報交換などの制度をかためたとしても、その行動力には自(おの)ずから限界があるでしょう。

 現に国境を無視した犯罪が行なわれているのに、それを追う側が妙な縄張り意識に邪魔されているなんて不合理だ、とは思いませんでしたか?

 自由に往き来できる機構があるべきだと。」

「 思ったわよっ! それ、帰ったら上司に提出するつもりだったんだから!」

「結構。つまり特務部(われわれ)の計画は功を奏したわけだ。」

 え?

「合同捜査の効果のほどを宣伝するためにもね、あなたには是非、成功して貰わなければならなかった。

 …それが今回の、ぼくの任務だったんですよ。

 地球警察内部から動きがおこる、時を同じくして連邦(リスタルラーナ)保安局長から正式な申し入れがある筈です。

 両世界共通の権限を持つ、有能な捜査官の集団、てやつが出来ますよ」

「………ひっ、人を操り人形にして…っ!!!」

「…地球人というのは感情が豊かでエネルギッシュで」

 あたしは怒っているというのに突然ロルーときたら、くすくす笑いはじめた。

「実に魅力的だ。

 陰にこもって警察(テラズ)の妨害工作をやりながら、突破口を開いてくれる人間をずっと待っていたんです。

 あなたは優秀で結局ほとんどぼくの出番が無かったくらいだし、経歴からいってもまず確実に汎宇宙特捜部隊(リゼラセート)入りとなるでしょう。

 で、そのシステムの話なんですが、これは現行の特務部の体制をひっぱってきて二人一組の最小行動単位をつくることになると思います。

 で、ぼくにはいま特定のパートナーっていないんですよ。

 …で、つまり…。」

 ………ちょ、ちょっとタンマ。

 何が言いたいのよっ!?


「ぼくと組みませんか? できれば一生。」






https://www.youtube.com/watch?v=tyANFcnrM8I
No Mercy - Where Do You Go



綾つり人形

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