そりゃあね。

 何もなかったはずの空間からいきなり現われて相手方のスキをつけたのは良かった。

 一度内部に喰いこんでしまった後の銃撃戦えは圧倒的な人数差というやつが、かえって有利に働かないこともない。

 …だけどねーーーーー!!

 それにしたって40対2、なのだ。

 40人、v.s.(バーサス) たったの2人!

 どうやって、勝てって言うのよっ?????



 とにかく撃って撃って撃ちまくった。

 けど、背後から狙われてたらどうしよう、足下には確かな大地があるっていう2次元的戦闘とは違って、味方と背中合わせにしてたくらいではどのみち攻撃は防げないのだ。

 自然、分散して自分の身は自分で守るしかないって状態になる。

 ぐるぐると廻り込んでばかりで背中の制御装置はもう悲鳴をあげんばかりだった。

 あらぬ方からの援護射撃が唐突にはじまってロルーがどこかに有利な足場を確保したらしいのがわかる。

 だけど彼のってレーザー銃(ガン)じゃない。

 ソルテーンに拡散されたって、ほとんど牽制以上の役には立ちそうもない。

 と、………。

 奈辺からだろう、ひどく熱いものが、脇腹をかすめていくのを感じた。

( ! やられたっ )

 熱線銃(ヒートガン)。

 地球警察官制式の持つ衝撃銃とは違うのだ。

 触れれば、気絶や骨折では済まない。

 何千度という高熱がスーツの被覆膜を溶かし、ぺろりと大穴を開け…



( 死。 )

 真空死。

 いやだ。

 殺さないで!

 …一瞬の恐怖からパニックに陥ったあたしに、すぅっと、抜けていく生命の音が遠く聞こえる。

 すくんでしまってもはや動ける状態にはなく。

 貧血にも見た最初の減圧ショックがやってくる。

 ………死ぬんだ。

 真っ暗な、諦念。

(( アリーさんっ! ))

 聞こえるはずもないサキの声が大脳の奥ではじけた。

 え??

 わずか5cmのスーツの穴からの噴流に、どれだけの反動力があるものだろうか。

 回転を加えすらせずあたしはまっしぐらに船壁へと投げ飛ばされていた。

 それに空気が………

 流失が、止まった?!



 ひったくるようにしてロルーにたぐり寄せられ、損傷に充填剤が叩きこまれた。

 補助パイプをあたしのエアタンクに接続、しようとして、規格の合わないことに気づく。

 あたしのは地球連邦警察の制式2装でしょ。

 ロルーのは、純リスタルラーナ製だった。

 ともあれ……

(とりあえず、救かった。)

 まだ完全に四肢は硬直し、冷や汗の絞り出された蒼白の顔のまま、ぼんやりと、それだけが解った。

 …そうとなればあたし回復は速いのよ。

 同じくらいひきつりきった表情のロルーがぐいぐいと手近のエアロックにひきづって行こうとするのに抵抗し、

( サキが。 )

 戦闘空間を指さし、自分はひとりで戻れるってことを示そうとした。

 ロルーは恐い顔をして首を振る。

 そんな、でも、女の子ひとりを戦場にとり残すわけにはいかないでしょうがっ。

 たとえその少女が見守るうちにも2人を斃すほどに、強く、腕が立つにしても。




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