異文化。

 それも、まったく共通点がない所というのなら、まだ諦めもつく。

 ほとんどが不思議なほど合い似通っていて、ものすごい微妙なところで、決定的な概念のズレがあるのだ。

 学生時代に言葉を習っていた頃から、それはしばしば感じていた事だけれど。

 後・最終戦争期(アフター・アーマゲドン)と呼ばれる半ばは神話上の時代から、地球が現在の文明を再び築きあげるまでに一千年もの長い歳月を要した。

 ようやく、" 救い手 "リースマリアルという、今は亡き偉大な指導者を得て地球統合政府が樹立されてから、まだ約50年。

 人類の宇宙空間への進出はめざましく、統合政府は地球系開発惑星連邦…通称" 連邦 "(テラズ)または" 地球連邦 "(テラザニア)…となって、そして。

 宇宙人=リスタルラーナ星間国家連盟、との公式のファースト・コンタクトから17年、経っていた。

 …ふん。

 しょせんはこの連中、みんな異邦人(エイリアン)さっ!


『” リスタルラーナ保安局の無能。石頭。融通きかずのスットコドッコイのドカゲなみの冷血漢の、無責任の、怠慢の…ッ”』

 さすがに、警部ともなると面と向かって国際紛争はひきおこせませんのよ。

 あたしは小声で、郷里の言葉で悪態を並べてやった。

 星間連盟(リスタルラーナ)にも地球連邦(テラズ)の共通語(第一公用語)を話せる奴はいないわけじゃないけど、(現にこのロルー刑事も通訳資格を持っているそうだけど)、

 あたし実は少数民族の出だものね。

 はるかな歴史的過去はどうあれ、ここ何十世紀というもの単一言語だけで通している連盟人(リスタルラーノ)には、ひとつひとつの惑星国家内にさえ複数の公用語が存在し、

(方言や非公用語=少数民族固有の言語にいたってはそれこそ無数にあり)

 ひとり3~4ヶ国語は(平均して)話せる。

(話せなけりゃ暮らしていけない)

という連邦文化の現状が理解しにくい、らしい。

『”自分ン所の落度棚上げにしてよくも人のイライラを嘲(わら)えるもんだわねっ?!”』

 …なんだってこのあたしが、せっかく追いつめた宙賊船が、あっさり国境を越えて連盟(リスタルラーナ)領域に逃げこんでしまえたのよ?

 一体なんのためにあらかじめ警告を出して、協力を要請したと思ってるんだっ?!

 それでいて、あたしにだけ警察権の相互介入は両国の友好関係にかんがみてどォのこォのと、一週間も足どめをかけるなんて、あんまりよ。

 何の因果かいまだに犯人引き渡し条約だけが無いなんてっ!

 …保安局のおエラがたを脅すやら、すかすやら、クビを覚悟で地球警察(こっち)の上司(ボス)とも大喧嘩をやらかして、やっとのこと特例として逮捕権を認めてもらいはした。

 ものの、それもリスタルラーナ側の捜査チームの指揮をとる、という形でで、呼吸(いき)のあった部下たちとは切り離されちまうし、なんのかの言ってロルー刑事なんていう御目付役はつけてよこすし…。

 くすんくすんっ。

 おねえさんは、とっっっても狂暴に、イジケてるんだからねっ!



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