『 ブラインド・ポイント ! 』 (1-2)
2017年8月11日 リステラス星圏史略 (創作) コメント (1)もう数週間もあたしは、とある宇宙海賊一味を追いかけ続けていた。
あたし、地球系開発惑星連邦(テラザニア)の連邦星間警察所属、アリニカ・デュル=セザール。
通称、" 走りっぱなし "(ハリーアップ)・アリー。
いちど狙いつけたら逮捕(つかまえる)までは停まらない。
その根性を買われてこの鳥月(とりづき)に警部に昇格したばかりの、腕っこき…なのよね、これでも。
そのあたしが未だにたかが海賊船一隻、捕まえられずにいるのは、一体誰のせいなのかしら?!
まったく…。
「…うるるるるるる~~~っ!」
「 わ、うならないで下さい。」
ロルー刑事はおびえたようなフリはしつつ、平然と笑っていた。
「 ふん。」
そりゃね、この艇で追跡をはじめてからもう10日に近いつきあいで、すっかりお馴染みのじゃれあいパターンに定着しつつあるとは言え、
…あたしがこの連中に対して本気で腹を立てているのも事実なのよ。
平然と冗談で片づけないで欲しいっっ!!
(……あ、まずい。また胃が痛くなってきた……。)
ストレスが溜まりっぱなりよ、もう。
あたしは嘆息をついて、渡された飲料パックに注意を向けた。
………あ~~っもう。
こんなくだらないとこにまで機械仕掛けをつけてるから、エネルギー不足になるのよ、この国は。
パック容器から吸い口(ストロー)を起こすくらい、手でやった方がよっぽど簡単でしょうがっっ!
ひとくち含んで、うなる。
「………また、おんなじ味……。ちっとも甘くないわよ、これ。」
全国一律、お茶(ティレイカ)といえば美味(あたり)不味(はずれ)もなく均一組成で出来ている文化って、どうかと思う。
あたしの故郷ではね、お茶って言えば、熱い温い、濃い薄い、その人の好みによって出し方に差があって、更に砂糖を何杯入れるかだとか、牛乳との割合はとか、気に入りの香辛料と一緒に煮立てる地方なんてのもあるし、そもそもお茶っ葉というものの種類からして、ひとつに限らず無数にあって、それで…
とにかくお茶の入れかたというのには、ティー・セレモニーって実践哲学(げいじゅつ)の分野もあるくらいで、そのひとの性格というか人柄が出るもんなんだからっ!
実用本位の高速宇宙艇だなんて限られた空間でさえなけりゃ、気分によって容器の模様なんかにも、気を配るしね。
(…………あ~ん。ストローなんか嫌いだ。お気に入りのニャンコのカップが恋しいよォ…)
そんなような事を一瞬考えて、あたしがどっぷりホームシックにつかりきった時だった。
ロルー刑事が云った。
「そうですか? じゃ、今度からあなたのには糖分を0.2%ほど多くするよう、キッチンコンピューターに指示(インプット)しておきますよ。」
…え~~~~い。
死んでしまえこの唐変木(とうへんぼく)っっ!!
ぐじゃっ!
…と不吉な音をたてて、飲料パックが潰れた。
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