https://www.youtube.com/watch?v=dEusU-NSG9o&index=12&list=PLwijtPhLBkg0SuGEn-YnDr71GSJEi-Txk
04 - 冨田勲 - タルタロスからの使者

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 星々の群れのなかに居て、それは確かに肉眼にすらくっきりと映っていた。

 皆、街路に出て、口々に騒ぎ、叫び、怒号し、…悲鳴をあげ。

 怯えていた。

 動揺はパニックを呼んだ。



「な、んですって。そんなばかな」

 突如として辺境星域最外縁に未確認飛行物体(U.F.O)が現われたとの第一報が入ってからわずか16時間。

 地球連邦の稚拙な跳躍技術では事故の危険をおかしてでも丸2年以上、亜光速で飛べばそれこそ13年近くはかかるというその 辺りから 距離を、わずか数躍の転跳で宇宙船は地球そのものの周回軌道にのってしまった、との、報告が届いた時刻すら宙空の光点の出現からたっぷり30分は経過した後だった。

 圧倒的な技術の差。

 たしかに、平和以外の意図があるのなら、とっくに攻撃を終えているであろうし、所詮、逆らってみても無駄な相手と言うべきだろう。

 男女二人からなる地球連邦首人は眼を見交わして窓辺を離れ、召集された行政議会の到着を待った。



 そして三日………

 各所での暴動めいた集団逃亡(スタピード)はすでに慰撫された。

 けれど相変わらず金緑色の巨大な輝きは宙天をゆるやかに横切り続け…

 人々はみな不安と緊張に疲れていた。

 それは無論、議場にあって結論を直接に下さねばならない立場の者達にとっては一層に重いものであった。

 口にのぼるのは疑問符と仮定仮説ばかり。

 若い首人ふたりは議会をよくまとめた。それは亡くなった連邦統一者の血縁としての権威と信頼とに十分応えるものであり、その存在が無ければ行政委員の主だった中にさえ重圧に耐え切れず、叫び出す者がいただろう。

 後アーマゲドン期千年のみならず長い人類史上でもおそらくは初めてであろう決断を下すという責任を、誰が背負い得るのだ?

 辺境の植民星の人間という意味ではない、真性の宇宙人との国交を樹立するか、否か…

 歴史や百年計画の全てを書き変えかねない事態を目の前に、広大な議場はむなしく湧き、また沈黙にとざされて、更に幾日もの時間を無駄に費い潰すほかは何もできないようだった。

 そして、そんな彼らをさらに圧迫しているのは、自己弁護のために許可を得て地球に降下してきた宇宙人の代表使節団。

 彼らの存在それ自体…。

 演壇にたって リスタルラーナ 自分達の世界とはの説明をなかなか達者な地球汎語でこなした後にも 彼ら一行は厳重な監視のもとに 議場内の宿泊施設に留まり続けた彼ら一行6人は、微妙な心理的負担の源となっているのである。

 示威行動など一切しない。ひたすらに礼儀正しく控え目な振る舞いが、かえって緊迫した 心理的な 重苦しさを引き立ててしまっていた。


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