『 天文台の物語 』 (仮)
2017年7月21日 リステラス星圏史略 (創作)https://www.youtube.com/watch?v=BRmKQGC3JBE
アイルランドのケルトはバグパイプ、フルート、ハープやバイオリンとのインストゥルメンタル音楽をリラックス
投稿用~こっちに入れておいた~☆彡
↓
http://estar.jp/_novel_view?w=24708415
『 天文台の物語 』(仮)
http://p.booklog.jp/book/112661/read
リステラス星圏史略 古資料ファイル
6-0 《麗天地》(リスタルラーナ前史)
↑
…あ☆ w(^◇^;)w
…原題は、『 気象台の 』物語。…だったわ…w
===============
帝国北方丘陵地帯のはずれ、小高い単峰の南麓斜面にその天文台は位置した。
正式名称は帝立天文気象地象観測記録予測予報予防対策対応立案実動庁北西領土総括局…とたいそう長たらしかったので、関係者は単に最初期時代のまま「天文台」と呼んでいたが、広大な山麓敷地内に建物群は幾つかに分散し、山頂部分は「山ごもり」と称されて一度出勤したら半月は下山できない不便さの夜間天文観測と「居候」と呼ばれる他省からの派遣者たちの動植物観察などを中心任務とする一方、「下界」と呼ばれる中心部分は気象予報や水害対策のための河川工事などで密接に人間界と関わり、定刻官僚という名の中級公務員である勤務者たちは徒歩15分ほどの独身寮から通うか、車で5分ほどのふもとの村に家庭を構えるかのどちらかなのであった。
その「下界」の職員らは各部署共同の大食堂で食事を摂ったが、そこの料理人たちは近在の農家の「第一線の力仕事からは引退した」と称する初老の集団によって占められていて…
野菜は新鮮だし量も多いし味付けも(田舎風だが)たいそう美味いと、たまさか中央から出張してくるたびに、上級職員たちはうらやましがるのであった。
その食堂で、防災土木課の若手のハルと気象情報通信課速記録係長のタナは、ひょんなことで知り合った。
夏の定食には必ずといっていいほど付いて来るプチトマトの歯ごたえがタナは苦手でハルは大好き、香りの強い新鮮なブロッコリーがタナは大好きでハルは苦手で…
たまたま隣に座った時におとなげなくもついうっかり交換こなんかしてしまって以来、昼休みの時間さえ合えば必ず一緒に食事をとることが習慣になってしまった。
喋ってみるとハルは話題の豊富な人懐こい愉快な相手だったし、どちらかと言えば物静かで聞き上手なタナの気象地象に関する博学ぶりはハルをすっかり魅了した。
すっかり気が合って話し始めれば時間はいくらあっても飽きるということがなく。
二人とも独身寮だったので、気がつけば出勤と帰宅も何とはなしに待ち合わせるようになり、休日もよく一緒に出掛けた。
時折りの天変地異に救急対応にと職場の騒ぎは交えながらも、個人的には平穏で楽しい数年の後…
ハルの実家の父が倒れた。跡を継ぐはずだった妹婿が、色々あって、離れていった。
…退職して、故郷に戻ると、半泣き笑いでハルが挨拶して去った後…
二度と会えないのかと、タナは愕然とする。
たんなる年の離れた気の合う友人。同士のままでも、よかった。
毎日、少なくとも自分の定年退職までは…必ず会えさえするのであれば…
幼なじみと結婚して、子どもも出来たと、ハルからは時々の報告がくる。
タナは無難に職場の近況などを報せ…
何年も、何年も、もう、会う機会すらなく…
やがてタナは定年退職し、郷里に戻った。
その村の春の桜一面はたいそう見事だと、何度もハルに自慢をしたことがあった。
はがきを書いた…
「良かったら、仕事の休みがとれたら、泊りがけで、花見に来ませんか…」と…
すっかり中年になっていたタナは喜んで飛んで来た。
家族はおいて、ひとりで車で、何時間もかけて、一心に走ってやってきた…。
桜を愛でて、酒を呑んで、昔のように、昼休みのように、一晩中、愉しく語り明かして…
翌日の午後、タナはまた車で半日かけて、仕事と家庭に戻る…
そんな年が十数年も続いた。
ところが。
ある年の冬の大嵐が、田舎の村の唯一のとりえの全ての桜をだいなしにして去った。
タナは絶望した。
もう、これからは、ハルを呼べない…
…いつもの季節になっても過ぎても、花見に来いとも来るなとも一報もよこさぬタナに不安を感じて、ハルが約束なしに村を尋ねた時…
すでに、タナの家は売却されていた。
…死んだと、いう…
ハルが知らぬうちに、桜の木々が折れたことに絶望して悲しんで、みるみるうちに体が弱って、周りの者が気づいて入院させた時には、すでに手遅れで…
案内された小さな墓のまえで哭きじゃくるハルは、ついに知らずに終わった。
…タナの感情が、友愛ではなく恋であった。ということを…
アイルランドのケルトはバグパイプ、フルート、ハープやバイオリンとのインストゥルメンタル音楽をリラックス
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『 天文台の物語 』(仮)
http://p.booklog.jp/book/112661/read
リステラス星圏史略 古資料ファイル
6-0 《麗天地》(リスタルラーナ前史)
↑
…あ☆ w(^◇^;)w
…原題は、『 気象台の 』物語。…だったわ…w
===============
帝国北方丘陵地帯のはずれ、小高い単峰の南麓斜面にその天文台は位置した。
正式名称は帝立天文気象地象観測記録予測予報予防対策対応立案実動庁北西領土総括局…とたいそう長たらしかったので、関係者は単に最初期時代のまま「天文台」と呼んでいたが、広大な山麓敷地内に建物群は幾つかに分散し、山頂部分は「山ごもり」と称されて一度出勤したら半月は下山できない不便さの夜間天文観測と「居候」と呼ばれる他省からの派遣者たちの動植物観察などを中心任務とする一方、「下界」と呼ばれる中心部分は気象予報や水害対策のための河川工事などで密接に人間界と関わり、定刻官僚という名の中級公務員である勤務者たちは徒歩15分ほどの独身寮から通うか、車で5分ほどのふもとの村に家庭を構えるかのどちらかなのであった。
その「下界」の職員らは各部署共同の大食堂で食事を摂ったが、そこの料理人たちは近在の農家の「第一線の力仕事からは引退した」と称する初老の集団によって占められていて…
野菜は新鮮だし量も多いし味付けも(田舎風だが)たいそう美味いと、たまさか中央から出張してくるたびに、上級職員たちはうらやましがるのであった。
その食堂で、防災土木課の若手のハルと気象情報通信課速記録係長のタナは、ひょんなことで知り合った。
夏の定食には必ずといっていいほど付いて来るプチトマトの歯ごたえがタナは苦手でハルは大好き、香りの強い新鮮なブロッコリーがタナは大好きでハルは苦手で…
たまたま隣に座った時におとなげなくもついうっかり交換こなんかしてしまって以来、昼休みの時間さえ合えば必ず一緒に食事をとることが習慣になってしまった。
喋ってみるとハルは話題の豊富な人懐こい愉快な相手だったし、どちらかと言えば物静かで聞き上手なタナの気象地象に関する博学ぶりはハルをすっかり魅了した。
すっかり気が合って話し始めれば時間はいくらあっても飽きるということがなく。
二人とも独身寮だったので、気がつけば出勤と帰宅も何とはなしに待ち合わせるようになり、休日もよく一緒に出掛けた。
時折りの天変地異に救急対応にと職場の騒ぎは交えながらも、個人的には平穏で楽しい数年の後…
ハルの実家の父が倒れた。跡を継ぐはずだった妹婿が、色々あって、離れていった。
…退職して、故郷に戻ると、半泣き笑いでハルが挨拶して去った後…
二度と会えないのかと、タナは愕然とする。
たんなる年の離れた気の合う友人。同士のままでも、よかった。
毎日、少なくとも自分の定年退職までは…必ず会えさえするのであれば…
幼なじみと結婚して、子どもも出来たと、ハルからは時々の報告がくる。
タナは無難に職場の近況などを報せ…
何年も、何年も、もう、会う機会すらなく…
やがてタナは定年退職し、郷里に戻った。
その村の春の桜一面はたいそう見事だと、何度もハルに自慢をしたことがあった。
はがきを書いた…
「良かったら、仕事の休みがとれたら、泊りがけで、花見に来ませんか…」と…
すっかり中年になっていたタナは喜んで飛んで来た。
家族はおいて、ひとりで車で、何時間もかけて、一心に走ってやってきた…。
桜を愛でて、酒を呑んで、昔のように、昼休みのように、一晩中、愉しく語り明かして…
翌日の午後、タナはまた車で半日かけて、仕事と家庭に戻る…
そんな年が十数年も続いた。
ところが。
ある年の冬の大嵐が、田舎の村の唯一のとりえの全ての桜をだいなしにして去った。
タナは絶望した。
もう、これからは、ハルを呼べない…
…いつもの季節になっても過ぎても、花見に来いとも来るなとも一報もよこさぬタナに不安を感じて、ハルが約束なしに村を尋ねた時…
すでに、タナの家は売却されていた。
…死んだと、いう…
ハルが知らぬうちに、桜の木々が折れたことに絶望して悲しんで、みるみるうちに体が弱って、周りの者が気づいて入院させた時には、すでに手遅れで…
案内された小さな墓のまえで哭きじゃくるハルは、ついに知らずに終わった。
…タナの感情が、友愛ではなく恋であった。ということを…
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