https://www.youtube.com/watch?v=jwu9nqDxZ-o
11 - Actress in Time Layers (Millennium Actress)

まとめました。
http://p.booklog.jp/book/114731/read
リステラス星圏史略 古資料ファイル
3-4-1 『五月病』

今週終了!

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 目が覚めると祖母様の家だった。

 まこに支えられながらタクシーで移動したおぼえがある。

  "花邑" (はなむら)と一言いえば地元の運ちゃんはぴたりと着けてくれるから、大きな屋敷というのは便利だ。

 そんなとりとめもないことを考えながら、ぼんやりと寝返りをうつお、そこにまこがいた。

(……………着物…………… )

 和服姿である。

 ぴっしりと細身の躯(からだ)にかたち良くきちきち着付けて、色も柄も、年頃にふさわりからず大層地味なのだろうが。

 のぞける白い袂(たもと)よりさらに淡く透ける二の腕が、息をつめるほど華やかだ。

(まこ……)

「あ、起きたか?」

 気配を感じてふり返る。手には行平(ゆきひら)。

「まったくもーっ、おまえってば…っ」

 窓辺から歩みよってくる、案に相違して、軽い裾(すそ)さばきは縒(よ)れてつまずくような未熟なものではなく。

 ゆるやかに膝をつく。

「医者が、言ってたぞ。三、四日絶食状態だって?」

 本人が自覚する以上に体はこたえていたのだ。

 わはは…とひきつり笑いする貴明の前に、まこは黙って据えてあった盆のうえに鍋敷きをしいて行平をのせ、射し出した。

「おれが創ったから味は保証せんけど」

 湯気のたつ黄金(たまご)おじやに色々と具がのっている。

 父子家庭で育った人間は必要上、かなり料理がうまいのを、もちろん貴明は知っていた。

 合掌して、ありがたく戴く。

「祖母様がよく許したな」

 時計を見るととうにHRは終っている頃である。

「許してない。おかげで今日一日この格好だ」

 ふてている。

「似合うぞ。」

 ………ちょっと、怒った。



 二度ほどおかわりをして他にも随分食べさせてもらい、やっと人心地がついたところで、ゆるゆるとまこが煎茶をいれる。

「で?」

 自分もひとくち含んで、訊く。

「親父が、帰ってこなくなってさあ…」

 仕事虫の父と、気をまわしすぎる専業主婦の、それでも、昔は、幸福だったはずの家なのだ。

 冬がきたのはいつ頃だったのか。

「海外出張のはずが、親父の従弟(いとこ)が死んでさ。電話をしたら、今、本社に勤務してますっつって…… 東京だぜ?」

 まこは、黙っている。

「今度こそ離婚(わか)れる、っておフクロと姉貴がイナカ行っちまって。…ついてかない、ったら、怒って冷蔵庫の中味全部処分してくんだよな。
 まぁ、あの女(ひと)もヒステリー起こしてたから…」

「そういう時は、さっさと家(うち)に来い!」

「動く気、しなかったんだ」

 さわさわと、離れで女性たちの華やぐ声が聞こえる。

 今日は茶道か、三味線のお稽古だろうか。

 どこかでヒバリが鳴き…

 日舞だったらしい。カセットの、邦楽が流れた。

「あのさっ」

 まこが、言う。

 笛の音。

「 …あの… 。 だから …」

 らしくもなく、言い澱むのを、「なんだ?」と、少し笑いを含んで貴明は尋ねる。

「一度。ちゃんと言っとかなきゃと、思ってたんだけど… その、色々考えて… 」

 煮えきらない。気づけば、頬が真紅になっている。

「だから……何だよ?」

「色々考えて… おれみたいなのを、って、おまえ、やっぱりヘンだと思うけど… けど、おれも。

 おれも、一緒にヘン… みたい、だから……っ」

 襟あしからのぞく項(うなじ)まで朱の花に染まっている。

 貴明は上体を傾けた。

「…好きだ…って?」

 声がかすれる。

 のぞきこむと、こっくんと肯く。

 仕種が妙に子供のようだ。…たぶん、二人して泣きそうな顔をしてたに違いない。

「 まこ 」

 どうしよう。触れたくなるではないか。

 そぉっと手をのばす。熱をおびた柔らかい小さなほほ。

 静かに、そぉっと、そぉっと…



 うぉっとん。

 わざとらしく咳ばらいが響いた。

「朝っぱらからお子達は…。そこまでに、して貰いますぇ」

 ばばっと、飛びはなれる。貴明など壁ぎわまでへばりついてしまっている。

 自分でもよく解っていないまこの方がまだ冷静だった。

「で~………っ! 時間っ!」

 そうだった。今日は稽古に参加するように言われて、だから着物になったのだ。

 しゃきしゃきと、祖母様は振り返りもせず渡り廊下を去って行く。

「お水を飲んでからお出でなさいよ。ひと舞、御手本にさして貰いますからね」

「へぇいっ!」

「返事!」

「はいっ」

 ぱたぱたと、小はぜの光る白足袋が反対側へ急ぐのを見送って、貴明は素直に、地面にめりこんだのだった。




          FIN.






(つくづく、ほんとに好きなんだな、こいつは。)という欄外カキコミあり。




コメント
霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2017年5月12日22:17


06
06

00☆



霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2017年5月12日23:02


んで。

これの一応「完成原稿」(同人誌発表バージョン)が、あるはずなのですが…

同人誌を盗まれた?あるいは
転居時に引っ越しやさんが紛失した?

疑惑で…(--;)

見つかりませんのです~★(TへT;)★



霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2017年5月12日23:03

06
06

06…☆彡

コメント

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2017年5月13日7:27

cmk2wl‏ @cmk2wl · 6時間6時間前

女の子がやっちゃいけない一番悲しいことは、
男のために頭の悪いフリをする事よ。

エマ・ワトソン

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2017年5月14日7:12

cmk2wl‏ @cmk2wl · 3時間3時間前

急がずに、だが休まずに。

ゲーテ

霧木里守≒畑楽希有(はたら句きあり)
2017年5月14日8:32

中津川 昴‏ @subaru2012 · 2時間2時間前
返信先: @subaru2012さん

カッシーニが調べたタイタンは茶色か黄色か緑がかった大気だけど、僕にはもっと青みがかっているように見えた。一番最後の青緑色がイメージと見た目に近いと思う。

https
://twitter.com/subaru2012/status/863506191959212036

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